第109話 禁忌に触れし者

「シルビア殿?!それはどういう状況だ?!」


ロリアが俺を掴み、顔を近づけてくる。


「そうですにょろ!何でいきなり喋るんですか!フレアちゃんの想いを無駄にするんですかにょろ!」


ワムテ、ややこしいから黙っててくれ。


「おねーさま、そのままの勢いでもっと前に出るんです。はぷにんぐです」


フレア、ようやく出てきたか。

これ以上ロリアが前に進むと、俺とキスしてしまうぞ?


「え・・・前に・・・えと・・・」


言いつつ、よってくるロリア。

そっと顔を横に避け、バランスを崩したロリアの身体を支えつつ、耳元なので声を若干抑えつつ言う。


「落ち着け、ロリア。フレアなら出てきているぞ」


ぎぎぎ・・・


ロリアがフレアを見て・・・


ぎぎぎ・・・


俺を見て・・・


「そこです、おねーさま。感謝感激の気持ちでおにーさんに!」


ロリアがキッと決心した顔をすると、顔を接近させて・・・


ぴす


おでこに人差し指を当て、ロリアを押し留めた。


何で空気読め、みたいな空気が漂うのか。

そもそも、空気読む空気って何だよ。


--


「事情は分かった」


ロリアが重々しく言う。


「フレアちゃんは、ご主人様から離れられないからだに・・・つまり、フレアちゃんとロリアが一緒に暮らす為には、ロリアもご主人様の従魔になる必要が有る、という事ですにょろ」


君、さっきからややこしくする事に熱心だね?

ワムテが言った的外れな発言に、


こくり


ロリアが頷くと、


「シルビア殿、私も従魔に・・・!」


「何でだよ?!」


流され過ぎ。


「まず、フレアは従魔になったが、行動に制約はない。つまり、ロリアのもとへ帰っても問題は無い。そして、更に言えば、ロリアが此処で暮らすとしても、従魔になる必要は無い」


「・・・っ」


俺が淡々と説明すると、ロリアが呻く。


「おにーさんは、もう少し空気を読むべきなのですぅ」


ジト目になったフレアが言う。

良いから、ロリアのもとに帰りなさい。


「ご主人様、宜しいのですか?」


月花が尋ねる。


ん?


「フレアは霊真エーテルの知識が有ります。監視しておかないと、禁忌に手を出して・・・しかもそれが魔王軍の手に渡れば・・・」


何・・・だと・・・


「それでは、おねーさまのもとに戻りますぅ!」


「待て」


宣言するフレアの首を掴む。


「すまん、ロリア。フレアは禁忌の知識に触れたらしく、解放することは出来ない。良ければ、ロリアの住居も用意するが・・・」


「そ、そうですか。解放出来ないなら仕方が無いですね!い、良いですよ。私も一緒に住みます!」


おお、許してくれるようだ。

妹を従魔にしてしまって、解放も出来ないのに・・・怒った様子は無い。

ロリアは優しいなあ。


「なるべく早く、状況が解消する様に努力するよ」


「いえ、お構いなく」


俺の言葉に、ロリアが首を振る。

何でだよ、そこは構えよ。


--


「キミという奴は・・・」


冒険者ギルドのギルドマスターっぽいお姉さんに、理不尽に怒られている。

・・・正直、このお姉さんの正体も薄々気付いているのだが、気付かない方が良い気がしてる。


「特に何かをした覚えは無いんだけど・・・」


俺の否定に、


「この期に及んで言い逃れるのかい?」


お姉さんがジト目で睨む。


心当たりが無いんだけど・・・


「キミ、霊真エーテルの研究に手を出したね?しかも、かなり進めてるよね」


「心当たりがなさ過ぎる?!」


待って。

あまりにも酷い。

霊真エーテルってそもそも何だよ。

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