第105話 くしゅん

攻城戦の見物。

久々の、魔王軍領への進軍。


「撃て!」


フェルの号令に従い、魔法使い達が一斉斉射。

光熱波に統一している。


ジジジ・・・


街に張られた結界を削ってゆく。


ヒュッ


空高く打ち上がる球体。

魔導爆裂弾。

着弾と同時に大爆発し、周囲を爆砕する。


「迎撃!」


フェルの号令。

後衛の魔法使い達が、氷塊を次々に射出。

魔導爆裂弾に当たり・・・


ゴアッ


中から無数の魔獣が現れ、滑空。

魔法使い部隊に向かう。


迎撃されるものや、剣士の遊撃部隊、騎士の守備部隊に阻まれるもの。


ゴゴゴ


周囲の石碑が動き、下から無数の魔物が湧き出てくる。

剣士部隊が迎撃に入った。


激しい戦い、戦術が飛び交うが、危なげ無く迎撃している。

最近は、魔族本人達では無く、魔物、合成獣、魔導機械兵、ゴーレムといった兵士が多用されている。


魔法使い部隊が再度魔法を行使。

結界に当たり、結界が揺らぐ。


一方、剣士部隊と騎士部隊が、少しずつ前進。

都市に近づく。


夕方頃、転身。

人間達が拠点へと戻る。

都市や魔族兵に被害は出ていないものの、魔物や兵器類を減らす事には成功した。

一方で、人間達に人的被害は出ていない。

人間側の戦果はまずまずだろう。


魔王城との直線上の進軍ルートでは、残りの拠点は2つ。

実際には、周辺の2拠点を含め、4つ落とせばチェックメイトだ。


魔王軍に肩入れはしないが、もう少し頑張って欲しい気もする。


--


「酷くないですか?!」


ロリアが涙目で抗議する。


「どうした?人間の進軍か?」


酷く無いだろう。

魔王軍は散々人間を殺しているのだ。

殴り返されて文句を言うのは間違っている。


ちなみに、ロリアは魔王軍に戻って、指揮している。


「人間・・・と言うか、シルビアさんの従魔ですよっ!」


ああ。


「ワムテか?」


脅かすのが好きだからなあ。


「ワムテさんもですが・・・ルナナさんも!」


「うさぁ?!」


急に飛び火して、驚きの声を上げるルナナ。


「ルナナさんを見るだけで恐慌をきたす人がたくさんいるんです!」


「無害だから慣れて貰うしか・・・」


「くしゃみした瞬間、周囲に光まいて、深刻な被害が出るんです!」


ロリアが叫ぶ。


「まあ、くしゃみは止められないので・・・仕方が無いですね」


月花が苦笑する。

いや、別にルナナ、普段はくしゃみしても光撃ったりしないよな?

そもそもくしゃみしてないか。


「うう・・・」


ロリアが恨めしそうな声を出す。


「後・・・トライプニルさんが駆け抜けるのもやめて欲しいです!」


「我が走るルートに建物があったのだ。仕方あるまい」


「避けて下さい!」


ロリアがプクッとする。

まあ、魔王軍があまり弱っても困るのだが。

かと言って、こちらが抗議を聞き入れる理由は無い。


それにしても。


「ロリア、えらく可愛らしい格好をしているな?」


抗議に来るなら、正装、軍服で良さそうなのに。

純白のドレスを着ている。


「か・・・可愛い・・・ですか・・・」


勢いを削がれ、顔を逸らすロリア。


「良かったですね。抗議にかこつけてご主人様にドレスを見せに来た甲斐が有りましたね」


「ちょ、何を言うんですか?!」


月花の的外れな指摘に、ロリアが怒る。


まあ、魔族が弱体化しても困る。

緩く釘をさしておこう。


後日。


「フェリオさん(大)がじゃれて転げ回った結果、深刻な被害が出たんですけど?!」


ロリアが叫ぶ。

知らんがな。


「やあロリア、今日の衣装も可愛いね。元気な感じがするよ」


「あ・・・有難うございます」


来る度に違う服。

やっぱり貴族だと衣装がたくさん有るんだなあ。

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