第103話 別の道を

「話を聞かない、って何?」


フェルがきょとんとする。

恐らく・・・フェルの部下は、フェルの事を二つ返事で聞いているのだ。

それは、フェルのカリスマ性だけが理由では・・・無いはずだ。


「それにさ」


続ける。


「魔王軍の動きに後手後手に回るのって・・・組織を優先し過ぎるからじゃ無いのか?」


そう。


「個として限界を感じ、軍としての体裁を整えた・・・それは凄いと思う。でもさ。それで個としての強さを否定したら・・・それも違うんじゃ無いかな」


今回の遊撃部隊による被害も、それが原因だろう。


「軍としての強さ、個としての強さ・・・その両立が必要だと思うよ」


すげー息苦しくてつまらない世界になってるしな。

人間の都市。


「・・・私達が・・・忘れていた物・・・か・・・」


ミストが噛みしめる様に言う。

俺が頷く。


リミアも、フィロも、アイリスも、静かに頷く。


「その通りだと思う・・・流石シルビアだね」


アイリスが言い、


「言ったの私よね?!」


フェルが叫んだ。

ですよね。


--


ギルドへの強制加入、徴兵が緩和され、ダンジョン探索も許可制では無くなった・・・臨時強制徴兵制度は残ったけれど。

聖墓ダンジョンも、少し賑わいを取り戻した様だ・・・そこ、最近俺がクリアしたから、他の所が良いんじゃね?


五王も、各自レベル上げを再開した様だ。

イデアはやっぱり事務仕事に勤しんでいるようだけど。


「此処から怪しい匂いがするわ!」


フェルが叫ぶ。

フェルと、ペアでダンジョン探索の約束をしたのだ。

ペアと言っても、カゲ以外は未召喚状態でついてきているのだけど。


そして、このダンジョン・・・妖精の森ダンジョンは、クリア済なのだけど。


「開いたわ!」


特殊な魔導具が無いと開かないのだけど、開けてしまった。

非常識にも程があるし、正規の手順を踏んでこそ価値があると思うのだけど。


ヒュヒュヒュ


矢が飛来。

フェアリーアロー、小さいが魔力が籠もったソレは、強い貫通力を持つ。


キリ・・・ヒュンッ


途中で方向が逆転。

そのまま射手に向かって飛び、撃ち抜いた。

フェルの矢返し結界だ。


「便利そうな魔法だな、フェル」


俺の言葉に、フェルが苦笑する。


「因果の場を設定し、飛来の属性を反転させているだけだけどね。対策していない飛び道具には効果有るわね」


今殺した妖精を締め上げ、案内させないと、先に進むのが大変なのだけど。

俺は道を知っているが、フェルに任せている。

クリア済の俺が教えたらつまらないからな。


フェルが肩慣らしをしたい、という事で、クエストに付き合っている。


「あら、良い男。良ければ案内してあげましょうか?」


お、ラッキー。

友好的なハイフェアリーだ。


ゴウッ


フェルの魔法がハイフェアリーを燃やす。

何故?!


「お、おい。フェル?」


「案内は要らないわ?恐らく、あっちでしょ」


指し示す方向・・・フェアリーの村だ。

確かにあってるが。


「フェル、此処は妖精を味方にしても、敵対しても、どちらでもクリア出来る。でも、味方にした方が楽だぞ?」


フェルはくすりと笑うと、


「それならやはり、敵対した方が良いわ。シルビアは友好的なルートでクリアしたんでしょ?別ルートも経験しないと」


「うーむ」


ちなみに、俺が仲良くなったフェアリー達とは別存在だ。

さっき普通に攻撃されたし。


「それでね、うちの子がね」


フェルがどんどん進む・・・フェアリーがちらほら行く手を阻むが、フェルが無意識に放った魔法が射落としていく。

会話に夢中だが、隙は無い。


「ん。この村を潰せば良いのね」


妖精王の住まう村。

妖精王の頼みを聞いて、鏡への道を開いて貰うか・・・もしくは、妖精王との勝負に勝って開かせるか。

何にせよ、殺したらクエスト失敗だ。


「吹き飛びなさい!」


派手に爆風が飛ぶ。

木に作られた家が次々に炎上する。

尚、巻き込まれて爆死している精鋭フェアリーは、レベルが40万程だ。

敵対ルートは超高難易度なのだ。

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