第102話 六王であること
「シルビアなら、独自の調査網や、シルビア自身の高い調査能力も有るだろ?それを駆使してフェルを見つけて欲しい」
・・・?
「何故俺がフェルを探すんだ?」
「シルビア?!」
アイリスが驚きの声を上げる。
「・・・シルビア・・・君は・・・フェルを助けないと言うのかい?」
ミストが震える声で問う。
・・・?
「助ける?何からだ?」
「フェルを、魔王軍からだよ!」
ミストが叫ぶ。
「シルビアさん・・・私からも御願いします。フェルを・・・助けて下さい。あんな勝手な人でも・・・私の、私達の親友なんです。仲間なんです」
リミアが懇願する。
いや・・・しかしだな。
「シルビア。御願いだよ」
フィロも、真面目な口調で言う。
「・・・いや・・・あのな。何故フェルの心配なんてするんだ?フェルに狙われた相手の心配をするのなら分かるが・・・フェルの心配をするなんてナンセンスだろ?」
お前等、フェルを何だと思ってるんだ?
「シルビア!君はまたそうやって!良いかい、もう六王は昔の様に最強じゃないんだ。レベル上げもしていなければ、狩りもしていない。六王は・・・もう過去の称号なんだよ。確かに、シルビア、君は最強のままだ。でも、みんなは違う・・・フェルは・・・六王は・・・弱い・・・」
ボタンの掛け違い、か。
歯車がずれたというか・・・
「なあ、みんな。何故
「それは・・・みんながいたから、です。最強の人達が集まった、最強のギルド・・・最強のPT、それが
リミアが言う。
みな、特に異存は無いようだ。
そっか、そうなるのか・・・
「違うよ」
俺は悲しくなって、告げる。
「
そう、それは原点。
そして。
「何故最強だったか・・・それは、みんなゲームを楽しんでいたからだ。そして、みんなゲームが上手かったからだ。強くあった、だから強かったんだ」
ミストはその言葉を咀嚼するように頷くと・・・
「でも・・・もう違う。私達はもう・・・強くない」
それが2つ目の間違い。
「なあみんな・・・確かに、ミストはその強さを・・・放棄したようだ・・・でもさ」
そう。
「何故、他もそうだと、決めつける?フェルは・・・変わらず、この世界を楽しんでいるよ?」
だから。
「フェルの心配をするなんて・・・ナンセンスだ。あいつは、笑って戻ってくるよ。何一つ心配する事なんて──」
ゴウン
凄まじい音が響く。
吹き上がる光の柱。
吹き飛ぶ大樹。
そして・・・巨大なクレーター。
訂正。
そうだよ。
フェルの心配は要らないけど、敵・・・もこの際心配する義理は無いけど・・・
固有フィールドじゃないんだぞ。
禁忌クラスの魔法を行使したら、跡地がどうなるか・・・
クレーターには、漆黒のもやが渦巻き・・・
恐らく、中和しなければ数百年は草木も生えないだろう。
後で月花達に処置してもらおう。
「おい、フェル」
クレーターの中央に悠然と飛ぶ人物に、声を掛ける。
「あら、シルビア。おひさー!」
笑顔でフェルが応える。
「やり過ぎだ。地形が変わってるってレベルじゃないぞ?」
「・・・森にちまちま隠れる奴等が悪いのよ。他の四王とかを誤魔化せる時間にも限界があるのに・・・」
「いや、速攻でばれて、お前の捜索を依頼しに俺の所に来たぞ?」
「・・・リリック・・・後で毟る・・・」
フェルが呪詛を吐き出す。
何を毟る気だろう。
ようやく、他の人達が追いつく。
フェルは四王に笑顔を向けると、
「残念だったわね。見ての通り、あいつは私が倒したわ・・・死体は確認できないけどね」
「残念とか・・・そういう話じゃないだろ。何をやってるんだ?!君は自分の立場を分かっているのか?!」
ミストが叫ぶ。
フェルはきょとんとすると、
「
「そこまで分かっているなら・・・軽率な行動を控えるべきだろう。君に何かあったらどうするんだ?!君がどれだけ貴重な存在か・・・!」
アイリスが叫ぶ。
フェルは溜息をつくと、
「貴方、何を言ってるの?私は
そう。
「なあ、ミスト。みんな六王の話を聞かない・・・統率がとれない・・・って言ってたよな。それってさ、今フェルが言った事に原因があるんじゃないのか?」
みんな、六王が偉いから従っていたんじゃ無い。
六王の行動に惚れ込んで従っていたんだ。
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