第101話 ロールケーキ

「それは・・・不可能ですね。人間を滅ぼすのは天命なので・・・少数がさぼる、程度ならともかく、種族全体が背く事は出来ません」


天命・・・信仰的な物か・・・


「信仰というか、ただのロールですね」


月花が何気なく言う。

ロール?


「アクティブロール、と、パッシブロール、はご存知ですか?」


「ご存知じゃないな」


あれ、と言った顔をする月花。


「まず、この世界に、原存オリジンから再生された化身コピーが配される時の事ですが」


「まずそこからご存知じゃ無いな」


何その分からない単語の嵐。

カゲも横で頷いている。


月花がきょとん、とした顔をする。


まあ、まとめるとこう言うことらしい。


世界を作る際、一から全て考えて作ると、面倒だ。

かといって、きっかけだけ与えて後は出来るのを待つと・・・必要な環境が整わない。


ではどうするか?


既に滅び去った世界の、ある時点の情報を元に、一部改変を加え、再生される。


つまり、今の魔王軍も、NPC――現地の人々も、かつて滅びさった世界の、在りし日の姿なのだ。


で、そのままだと噛み合わないので、設定の上書きを施されている。

これが、天命ロール

例えば、人間側は、魔王軍に勝たなければならない。

魔王軍は、人間を滅ぼさなければならない。

この天命ロールに背くのは、存在意義を否定するに等しいので・・・不可能、と言う事らしい。


「それで、アクティブロールとパッシブロールと言うのは何でござるか?」


カゲが尋ねる。


絶対運命アクティブロールは、女神様が意図して設定した天命ロール。背く事は出来ません。ロリアも、日常的に形容し難い不快感、不安を感じているはずです」


こくり。

ロリアが頷く。


「一方で、魔王軍が戦闘に関わる物のみに注力したり、策を用いなかったのは、それに関わる部分が原存オリジンから継承ロードされていなかっただけ。こちらは、きっかけがあれば変化が可能です」


とりあえず、人間を襲うのをやめるのは駄目、戦闘以外の事にも興味持つのはOKって事かな?


「そういう訳ですので、ご主人様のスキル、獲得せる運命ロールブレイカーでも無理ですね」


「うん、また聞き慣れない単語が出てきたよね」


--


人類の反撃、そして勢いづき、更には敵失・・・敵の大幅な後退。

人類は活気付いた。

取り返した都市には、大規模な移民。

多産が奨励され、来訪者たるプレイヤー達は神様扱い──神様の様に振る舞うプレイヤーもいるようだけど。


そこにきて、都市攻略の失敗。

しかも、六王すら傷つくという大敗。

そして・・・ここに来て、更なる行動の変化。


魔王軍が、人間側に、消耗を強いてきたのだ。


斥候を襲ったり、防衛力の薄い拠点を攻撃、からの撤退を行ったり。

制御をしていない魔物を人間の都市に向けて大量に放ったり。


魔族兵も基本が集団行動となり、単独を多数で取り囲む戦法も難しくなってきた。


そして──


「調査依頼?」


俺が訳が分からず、聞き返す。


「うん・・・完全に裏をかかれてしまってね・・・まかれてしまったんだ」


アイリスが呆然として言う。


度重なる襲撃。

それが、内地にある都市で繰り返され・・・


どうも、森に遊撃部隊が隠れ住み、散発的に都市や村を襲っているのでは・・・

そういう話が持ち上がった。


しかし、都市の防衛戦力は動かせず、対処が難しい・・・


フェルが切れて、兵を率いて出撃すると宣言。

しかし、他の四王や支援者達に止められる・・・


そこでフェルは、賛同者を囮に使い、単独で出撃してしまった、らしい。

盗賊ギルドですらその足跡を追えていないとか。


・・・?


「良く分からないんだが・・・それで何故俺に話を持ってきたんだ?」

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