第100話 視野を広げて

「娘は──」


魔王がなんか色々語り出してしまった。

仕方が無いので適当に受け答える。

何だか娘の特徴、ロリアに似ているな。

案外、ロリアってかなり高位の魔族で、王女様とは親族とかなのかも知れない。


「若者よ・・・いや、婿殿。この度はすまなかった・・・娘とも、話し合おう・・・」


魔王は俺の顔を見て、


「娘がそなたに惹かれるのも良く分かった。そなたであれば、仕方有るまい」


いや、娘さんとは会ってないですけどね?


「それにしても・・・我が軍は蹂躙されておるようだな・・・どうも、我々はまだまだ奢りがあったようだ・・・帰ったら初心に返ってみるとしよう」


そう告げると、魔王は帰って行った。

良かった。

まだゲームクリアする気ないんだよ。


--


内地でのスタンピード。

最低最悪の事件が起きたが・・・戦力を集中させる事で、何とか解決。

そして・・・


隙を突いて魔族の反撃が予想されたが・・・魔族の動きは無かった。


それどころか・・・


各地で魔族の撤退が相次ぎ、人間側はますます祝賀モード。

・・・各地に最低戦力を配置するのと、訓練にダンジョンを使う様にした事で、一時的に流動戦力は減少したが。


そして、満を持しての魔王軍支配都市への進行・・・


敗北した。


見通しの悪い場所での少数精鋭の奇襲、足背をつかれ混乱し、一時撤退・・・

撤退ルートに配置された伏兵や魔獣が足背、または背後から襲撃、次々と遠征軍は数を減らし・・・

実に戦力の半分近くを失う結果となった。

六王のアクアとミストも怪我を負ったらしい。


見通しの悪い場所に長い隊列で突っ込むなよ。


「魔王軍の動きが変わった?」


リミアの困惑に、俺が問い返す。

よしよし、良い傾向だ。

・・・いや、人間側に被害が出たのは良くないんだが、それは人間側が舐めた事をしたからだ。

今後はお互い警戒して、膠着してくれれば好都合だ。

攻められているなら問題だけど、守れているなら守っておけば良いじゃん。

クリアしようとするなよ。


「はい・・・今までは人間を舐めた印象で、奇策は用いてこなかったのですが・・・最後に経験した戦いに比べ、あまりにも違い過ぎます・・・」


むしろ、相手が奇策を用いてくるのが普通だと思うんだけど。

というか、あの戦術って奇策か?


「こちらも、少しずつ攻略すれば良いだけだと思うが。視界の悪い場所では警戒したり・・・森を焼き払ったり、少しずつ砦を作って拠点を確保したり・・・そういった事をしなさすぎるだけじゃ無いのか?」


「・・・おっしゃる通りですね・・・」


リミアが頷く。


リミアが帰った後、ロリアに話しかける。


「魔王軍も、大分兵の運用がわかってきたようだな」


「はい、お父様も、色々考え直したそうです。それに・・・戦い以外に物にも目を向け始めて・・・国は劇的に良くなっていますよ。これも全て・・・シルビア様のお陰です」


ロリアが微笑む。

ロリアの父親、宰相とかの偉い地位の人なのかな?

戦い以外にも目を向けてるっていうのは良いな。

この前は、戦闘の為の存在、みたいな感じだったし。


「なあ、ロリア。魔王軍と人間って、共存共栄って出来ないのか?」


小競り合いは良いけど・・・ここまで大きな殺し合いもしなくても良いんじゃ無いだろうか?

まあ、散々魔王軍をドロップに変えた俺が言う言葉でも無いんだけど。

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