第97話 君はただ微笑んで

「「違う?!」」


総ツッコミ。

あれ・・・月の神だっけ・・・?


「いや・・・神の名前とか、そうそう知らない・・・」


「冗談だろう?!」


アポロンが何故か必死に揺らす。


・・・


「とにかく、戦いか・・・月の男神・・・弱点は何だろう・・・」


「月でも無いからな?!」


アポロンが叫ぶ。


「とりあえず、フェリオの冷気攻撃を中心に・・・トライプニル、火炎耐性の結界を、ルナナ、光耐性の結界を」


「何故そこだけ的確なのか?!」


あってるなら良いのでは・・・?


「ご主人様」


月花がぽつりと言う。


「どうした、月花」


「アポロン様ですが・・・パーティー級換算のレベルが、10京くらいです。手を抜いて」


「強過ぎだろ?!」


無理ゲーじゃん。

今から引き返せるのか・・・?


「ふはははは、ようやく我の恐ろしさに気づいたようだな!」


アポロンが高らかに笑う。


くそ・・・


「流石・・・豊穣の女神・・・!」


絶望すら滲ませ、俺は膝をついた。



ダンジョンクリア扱いにして貰う代わりに、下層に順に降りて、アポロンの伝承の勉強をするよう懇願されました。


太陽の神様で、男神。

覚えた。


--


進行は順調だ。

奪還した都市は2つ、周囲の都市も無力化してある。

占領時に盗賊ギルドが中心になって仕掛けを探し、封印された魔物は排除。

再侵攻してきた敵も、全て退けている。


早くも楽観ムードが漂い、五王はそれぞれ、引き締めに気を割いているらしい。


順調。


アイリスとミストが、久々の息抜きに来ている。


「疲れた・・・」


ミストが何度目か分からない溜息をつく。


「大丈夫ですかにょろ?」


少女が、ミストに何度目かのお茶を差し出す。


白髪に黄色い目、薄い肌の少女。

純白のローブを纏っている。

儚げな少女・・・ワムテが擬態した姿だ。

本来の姿の場合、視認した人に正気チェックが発生し、発狂するらしい。


本当かどうか分からないが、砦を攻めた時には恐慌と同士討ちで戦いにならなかった。

慣れてないとキツイのだろうか?


ちなみに、闇の中ではプラス補正がかかり、凶悪化するらしい。


まあ、別に発狂しなくても、触手に貫かれて死ぬんだけどな。

結局、1人で砦を落としてしまった。


「有難う・・・うん、何度飲んでも美味しいね。これ、何のお茶?」


ワムテは、頬を赤らめると、はにかんだ笑みを浮かべる。

それを見たミストが、釣られてほっこり笑う。


いや、何のお茶か言えよ。

料理もお茶も美味しいけど、材料教えろよ。

疲れが癒えたりするけど、気分良くなるけど、材料何だよ?


「・・・魔物?」


カゲが訝しげに呟く。


?!


周囲の気配を探るが・・・魔物の気配は無い。

アイリスとミストも、警戒を張り詰める。


「魔物・・・ですか・・・にょろ」


ワムテが怯えた声を漏らす。

君が1番魔物だよ。


「大丈夫だよ、ワムテちゃん」


ミストがそっと抱き寄せる。


「やだ・・・怖い・・・魔物が・・・街に・・・地平線を覆い尽くす魔物・・・兵士が・・・やられ・・・」


アイリスもワムテの頭を撫でながら。


「大丈夫?そんな経験した事があるのかい?もう大丈夫だよ・・・人は、反撃を始めたんだ」


ワムテがいやいやをしながら、


「城門が破壊・・・魔物が流れ込み・・・火の手が上がり・・・幼子が逃げ惑い・・・もう戦える者はいない・・・」


「大丈夫だって」


ミストが再度慰める。


「・・・ワムテ殿・・・被害状況や原因など、分かっている情報が有るなら教えて欲しいでござるよ・・・」


カゲが呻く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る