第89話 君は水の中で溶けて
「解除を試みます」
メイルが扉の傍に行き、適当にコンソールを操作する。
「誰だ!」
警備の魔族が叫び、警報を操作しようとして、
ガッ
メイルが無造作に投げたモリに、頭を貫かれ、沈黙。
「解除しました」
ガガガ・・・
扉が開いていく。
「馬鹿な?!」
叫ぶ、警備員や研究者。
中には、見るからに怪しい赤いボタンがついた箱を操作する者も。
「研究所の自爆ボタンですね」
月花が冷静に言う。
「大丈夫なのか?」
自爆する様子は無いが・・・
「システムに侵入して、照明のオンオフに繋げておきました。電気を点けたり消したりして遊んでる悪戯っ子になるだけです」
メイルが興味無さそうに言う。
とりあえず、進むか。
--
「これは、クリスタル?」
4属性程では無いが、かなりの力を持っているようだ。
「地上にあった物を運び込み、解析していたようです」
月花が肯定する。
「あの魔物・・・極めて強い力を感じるでござる・・・」
培養液の中で培養される魔物・・・極めて危険な力を感じる。
俺やカゲでは勝てないだろう。
「まだ未熟ですが、成長すれば強そうですね。クリスタルの力を流用して作った魔物・・・それが目的というよりは、作れそうだから作っている、という感じでしょうが」
月花が言う。
「名付けるなら、晶魔獣、と言った所だにゃ」
バスレトが言う。
「似たような形で培養されている個体が、別の都市にもいるが・・・この都市のこやつが一番進んでおるの」
フェリオが言う。
カゲがさっきから超メモしてる。
「とりあえず、殺しておいてくれ」
俺の言葉に従い、メイルが機械を操作。
晶魔獣が溶けていき、骨になった。
「自壊プログラムを実行しました。バグっていたので、少し直しましたが」
メイルが淡々と言う。
メイル、出来る娘。
「貴様等!何をしている!」
魔族の女性。
多分、姫将軍というやつだろう。
美人だが。
「貴様等、動くな」
言い放ち詠唱を始め━━
静止する。
カゲが刃を突き付けたのだ。
「怪しい者ではない。騒ぐな」
カゲが低い声で言う。
「ぬ・・・ぬぬ・・・」
「研究成果を見物した後、無力化、データを破壊したら大人しく撤収する。協力するが良い」
トライプニルが告げる。
多分、無理な要求だと思う。
「何だと?!」
魔族が叫ぶ。
そりゃそうだ。
まあ、
「あんた。俺達は冗談を言ってる訳では無い。協力しなければ殺す。それで好き勝手に見て回るだけだ」
協力したら逃さないといけないのだろうか。
「・・・分かった。抵抗しない。ついて来い・・・」
魔族は力無く、そう言った。
--
「残念だったな!此処が貴様等の墓場だ!」
魔族が叫び、開きつつある檻を指す。
まあ、降伏したフリをして、戦力のある場所に誘導、襲わせる。
定石では有るが。
ゴウッ
フェリオの放った蒼い光が、壁を撃ち抜く。
魔獣が外に向かってぞろぞろ出て行く。
制御出来ない魔物なら、逃してやればいい。
「なっ?!」
「此処が魔獣研究所か。魔導研究所にいたヤツの方が数段やばいな」
「・・・当然だ。ミカエルは我らが最高傑作・・・」
「戦力は今ので全部か?」
「そうだ!」
月花がすっとよって来て、
「ご主人様、囲まれています。恐らく、施設ごと破壊するつもりかと」
バスレトが魔族を見て、
「見えるかにゃ?外の奴等は、キミごとこの施設を破壊するつもりにゃ。キミは裏切られたのにゃ・・・ご主人様に仕えるなら、特別に見逃してあげてもいいにゃ・・・?」
「外の兵に指示を出したのは私だ?!」
無理だよ。
どう見ても敵対しているじゃん。
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