第87話 心に決めた

「相手が奇策を用いなくても、分断を恐れなくて良くても、総力戦で来られたら包囲殲滅されるんじゃないかしら?」


フェルが言う。


「その通りだと思うよ」


俺が同意する。

流石に、進行ルートだけ占領していくのは、穴だらけだろう。


「でも、地道に全部攻略していくとなると・・・数年、下手したら数十年かかるよ」


ミストが言う。

むしろ時間かけようぜ。


「なら、こうしよう。どっちにしろ、しばらくは全員のレベルを上げないといけないから・・・レベル上げついでに、都市を攻めたり、遊撃して戦力を減らしたりしよう」


フェルが提案する。

遊撃でランダムに攻め、街の住民を攻撃・・・実は結構非道な事なんだが、敵だから大丈夫。


「そもそも、魔王軍ってどのくらいの数がいるんだ?初期の頃防衛戦に参加した時とかは、かなりの数がいたが・・・」


俺が尋ねると、


「正確な数は分からないね・・・アンデッドや魔獣を作ったりして、数を水増ししてるし・・・」


フェルが呻く。


「人間領と接する都市には、結構な密度で戦力を配置してあるでござる。逆に、人間領から遠い場所は過疎っていて、殆ど魔族はいないでござる」


カゲが補足する。


「人間領に近い場所の方がすごしやすいのかな?」


俺が言うと、


「純粋に防衛や侵略準備の為ですね。人間の様に、生活する事が目的では無いので」


月花が言う。


「生活する事が目的じゃない?」


フィロが訝しがる。


「魔族は、人類に敵対する試練として喚ばれた存在だからにゃあ」


どういう事だ?


「・・・史実だと、魔王軍は突如として現れた、とある・・・成る程、魔王軍そのものが、女神様の試練なのか」


フィロが頷く。


成る程・・・なら、


「つまり、魔王軍を倒したからといって、魔王軍の本国から大規模な増援が来たりはしない、って事か」


「女神様の試練がそこで終われば、ですけどね」


月花がぽつり、と言う。


「・・・試練が十分でない、と判断されれば、増援、の形で追加の試練をお与えになる、という事ですね・・・」


リミアが祈るような仕草をする。


まあ、何にせよ。


「一直線に最低限だけ確保、は避けた方が良いと思う。せめてこのくらい、だな」


周囲の都市をぐるり、と円で囲う。


周囲の都市を制圧してあれば、外周部が陥落した時点で、撤退なりなんなり、対応する余裕が出来る。


「理想を言えばこうだな」


要塞、地形的に横から攻められにくい都市を繋ぐ。


「確かにこのルートなら、防衛に必要な戦力も節約できるね」


アイリスが頷く。

直線ではなくなるが、横やりは入れられにくい。

補給路が面倒な事にはなるが、冒険者ギルドを使ってズルが出来るなら、十分有りだろう。

それでも横から攻める方法は有るが・・・魔王軍は正面から来ると言っているし。


「方針は決まった。これを、人類の方針として告知するよ」


フィロがそう、強い口調で言う。

アイリスが、ミストが、リミアが、フェルが、頷く。

イデアは、協力はするらしいが、この場には不参加。


俺は・・・とりあえずはダンジョン攻略、かなあ。

武器は供給するよ。

最近、ダンジョンに行く人が激減しているんだよね。

地上でもレベル上げ出来るから、ダンジョンに行くメリットがあまりないらしい。

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