第71話 世界を純粋に楽しむ人

「それより・・・あんたは何故此処に?昨今、ソロは推奨されていない。ソロでうろうろする場所じゃないだろう?」


逆に探りを入れてみる。


「たまにふらっと歩きたくなるにゃあ・・・だって、この世界は凄く美しいにゃ。レベル上げや街の防衛、治安維持・・・それだけがこのゲームじゃないのにゃ」


ほう。

なかなか話が分かる。


「それは、俺も同感だ。俺が今開放したエリアも、特に意味の無い海のフィールドが、かなり広い。本当はそういった物を楽しめれば、と思うよ」


「にゃ!そうなのにゃ!もっと世界を楽しむべきにゃ!この前、コキュートスの奥山で、スキーを楽しんだのにゃ!」


満喫し過ぎだろう。

この猫人、超高レベルだな。

コキュートスの奥山って、推奨レベル7万くらいじゃないか?


「奥山なら、推奨レベル10万を超えるのぅ」


フェリオが言う。

そうなのか。

というか、エリアボスのなんちゃって討伐推奨レベルより高いんじゃね。

アライアンス級ならそうでも無いのかな。


「わ、その狼喋るにゃ。良いにゃあ!」


猫人が、フェリオに気付き──と言うか、発言する為に勝手に出てきたのだけど──フェリオをモフる。


「従魔だな。欲しいなら、自分で捕まえる事だ」


俺が言うと、


「従魔・・・サモナーや、魔道士系のファミリアかにゃ」


猫人がぶつぶつ言う。


「これは一般従魔だな。確率が低いからかなり苦労した」


苦労した、は嘘だが。


レンジャーはそもそも、従魔推奨の職業だしな。

もうなれないけど。


「ソロモンの首輪が有れば高確率だっけ・・・良いにゃあ・・・欲しいにゃあ」


詳しいな。

URアイテムのソロモンの首輪が有れば、自レベル以下の一般魔物は高確率で従魔にできる。

俺も持っているが、月花のおやつなのであげられない。


「うー・・・息抜きに抜け出して来たけど、やりたい事が多過ぎるにゃ。もっと時間が欲しいにゃ!」


くっ・・・


俺は思わず笑ってしまった。


「好きな事をすれば良いだろう。俺達、ほんの数人がスローライフを満喫していても、そう大局が動く訳では無い。それに、俺は思うんだよ。この素晴らしい世界を純粋に楽しむ人もいないと・・・この世界を創り給うた女神様に失礼だと思うんだ」


「・・・なるほどにゃあ」


猫人が頷く。


「とりあえず・・・見てみるか、中?」


俺は、ゲートを目で指し示した。


--


「にゃ・・・早いにゃあ・・・」


100km遠泳勝負・・・勝つには勝ったが、余り差がつかなかった。

この猫人、本気で早い。

至高の六王ヘキサグラムのメンバーとカゲ以外には、比較にならない強さだと思っていたのだが。


にしても・・・


「「流石に疲れた(にゃあ)」」


同時にそう言い、2人で吹き出す。


「やっぱり、地道な修行とか、そんな事をしてる場合じゃないにゃ。もっと面白い事を探すにゃ!」


覚悟を決めたようだ。

何より、だな。


「うさっ、うさっ」


ルナナが出てきて、餌をねだる。


「お腹がすきました」


月花。


「うまうま」


トライプニル。

それは馬の鳴き声じゃない。

というか、ルナナも、それは鳴き声じゃない。


ドサ


屑魔石を砂浜にぶち撒ける。


従魔が群がり、食べ始めた。


「にゃ・・・従魔がいっぱいにゃあ」


「ああ、俺の従魔は4体いる」


カゲも従魔扱いだが、流石に魔石は食べない。


「というか、見た事が無いような高レベル魔石の山にゃ」


いや、レベル5万以下の量産品だぞ。

高レベルの物は別によけてある。


至高の六王ヘキサグラム


ぽそり、と猫人が言う。

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