第72話 物見遊山ギルド

ほう。


至高の六王ヘキサグラムには、大きな謎が有るにゃ」


「どんな?」


猫人がにやり、と笑うと、


魔導王アークウォーロック聖王アークセイント剣王アークソード賢王アークセージ騎士王アークロード影王アークシャドウ・・・その誰もが、最強の強さを持つのに・・・その誰もが、ギルドマスターではないのにゃ」


つまり、


「つまり、至高の六王ヘキサグラムには、7人目がいるのにゃ」


そう。


「これは私の推測にゃのだけど・・・影に隠れて、人類を支援している・・・」


いや、そういう訳でもない。


「蒼天の槍が崩壊したのも、碧山の盾が崩壊したのも、7人目のせいにゃ」


「勝手に碧山の盾を崩壊させないで貰えませんかね!」


俺がどれだけ苦労して、フラグ折ったと思ってるんだ!


「碧山の盾も近い内に崩壊すると思うにゃ」


自信満々で言う猫人。

何でだよ。


「六王のギルドにそれぞれ分散すれば良いと思うのにゃ。統合型のギルドは・・・もう役割を終えたにゃ」


「勝手に終わらすな」


それに、フェルのギルドは結構バランス良く入っているらしいしな。


まあ、何にせよ。


この世界を楽しみたい、という人が増えるのは、個人的には嬉しい話だ。


--


「シルビア、有り難う!」


フェルが開口一番、そう言った。


碧山の盾が、内部崩壊した。

・・・何でだよ・・・ちゃんと俺、そつなくこなしたよな。


ああ。


そうか、俺のせいじゃないんだ。

きっとそうだ。


「今度こそ、俺のせいじゃない」


そう、違う。


ミストが、おや、という顔をする。


「あれ、でも、碧山の盾のギルドマスターが、ギルドを脱退した理由、シルビアの影響だって言ってたよ?」


おかしいよな。

そもそも、俺名乗ってないよな。


「何にせよ・・・うちのギルドも、また人がたっぷり増えたよ・・・フェルのギルド程じゃないけどね」


アイリスが半ば困った様に言う。


「私の所も、辻ヒーラー以外の方が増えてきて、何がメインか分からなくなってきています・・・人の助けになる、という点では変わりがないのですが」


リミアが言う。


「私の所は、押しも押されぬトップギルドになったわ!」


フェルが言う。

リリックさんが過労で倒れないと良いけど。


そう言えば、


「物見遊山ギルド作って、はみ出し者ばかり集める者もいるしな」


猫人──スレイは、結局ギルドを作ったようだ。

本道から外れた者達・・・はぐれ者達を集め、ダンジョン攻略やファッションショー、観光情報の収集、珍味の探求・・・俺も時々混ぜて貰っている。


「噂には聞いたことが有りますね」


リミアが言う。

六王は、西に東に駆け回り、治安維持に防衛、レベル上げ支援・・・忙しいようだ。

スレイのギルドに構ってはいられないのだろう。


「そういえば・・・結局、碧山の盾のギルドマスターは、何処に行ったんだ?」


俺が尋ねると、ミストが変な顔をする。

何故だ。


「シルビア、今自分で言ってたじゃん?」


・・・?


「いや、碧山の盾のギルドマスターは、多分1回会ったきりで・・・」


「そうなの?スレイからは良くシルビアの話を聞くけど」


波が打ち寄せる音が響く。

カモメが・・・鳴いている。


潮風が心地良い。

焼けた砂浜が、良いアクセントだ。

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