第63話 至高のギルド

「それでね、私のギルドに目をつけた蒼天の槍がさ、傘下にくだれって言ってきてさ」


いつも通り、湖畔のフィールドにて、フェルの愚痴を聞く。


蒼天の槍・・・最古参ギルドの1つにして、至高のギルド。

所属メンバーは50万を超える。


成長しているギルドを見つけたら、かなり強引に併合するらしい。


「勿論断ったんだけど・・・こっそり接触してきて、4割程のメンバーが引き抜かれたのよ!」


「それは・・・災難だったな」


まあ、所属ギルドなんて、個人の自由。

ギルドマスターとしては腹が立っても、仕方が無いと言えば仕方が無い。


「蒼天の槍・・・ギルドマスターのヒイロがかなりのやり手ですね」


月花が言う。


「そうなのか?」


尋ねると、月花が頷く。


「ヒイロ、蒼天の槍のギルドマスター。仮面で顔を隠していて、その素顔は誰も見たことが有りません。プレイヤースキル、隷呪を行使し、NPCやプレイヤーを奴隷化できます」


ちょ。


「職業は伝承英雄。全ての武器と、全ての魔法を扱います」


・・・何その強さ。


「うわ・・・」


フェルも呻き声をあげる。


「レベルは既に100万超え、そのカリスマから、1声かければ億の人が動くと言われます」


それは・・・


「フェル・・・相手が悪くない・・・か・・・?」


何だよ、その奴隷化って。

プレイヤースキルって、そこまで強い効果無いんじゃなかったのか?

職業も、弱点は用意しておけよ。


「・・・私も、そこまでとは知らなかったわよ」


フェルの顔が青ざめている。

フェルよりレベル高いんじゃないか?


月花が不思議そうに、


「ツッコミ待ちなのですが、ツッコミはまだでしょうか?嘘に決まってますよね」


・・・


「月花、淡々と嘘の情報を提供するのやめてくれ」


システム説明っぽいのりで言われたら信じるだろ・・・


「ヒイロは、まだレベルは1万ちょっと。隷属させるスキルも無いし、伝承英雄もやや器用貧乏な職業でござる。1声かけて動くのは、数十万でしょう」


カゲの訂正。

なるほど。


「何で月花ちゃん、さらっと嘘をつくの??」


フェルが月花をぐらぐら揺らす。


「落ち着きなさい。ご主人様の従魔である私に危害を加えると、ご主人様に嫌われますよ」


「黙れええええ」


「フェル・・・とりあえず落ち着け。月花も、しれっと嘘を流すな」


とにかく。


「フェル、出ていった者は仕方が無い。堅実にギルドを成長させる、それが1番だぞ。他を吸収しまくって急成長しても・・・いつかボロが出る。そう遠く無い内に内部崩壊するよ。な?」


「うう・・シルビア・・・」


フェルが涙目で見てくる。


「蒼天の槍は、最古参ギルドの1つ。恐らくそう簡単には崩れないですが・・・」


カゲが呻く。


「フェルのギルドは、むしろ移り気な人が大半出ていって、活動しやすくなったとギルドメンバーは喜んでるうさ。サブマスのリリックなんて、もうマスターに募集して欲しくないとか考えてるし、妹さんも最近はリリックと直接連絡とってるうさぁ」


ルナナが言う。

いや、その情報をルナナが知っているのはおかしい。


「騙されないからね!」


流石のフェルも、それは分かったようだ。

ルナナをすごい勢いでモフる。


すっ・・・


カゲが何故か顔を逸した。


まさかな。

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