第62話 願い事を100個にして下さい

俺は頭を振ると、


「それは違うと思いますよ。このゲームは、きっと何をしても自由なんです。魔王軍との戦いを頑張る人がいても良い。俺みたいに、自分を鍛えたり、ダンジョン探索を楽しむ人がいても良い。世界観を楽しむ人がいても良い。PKをしたり、強盗をして・・・ヒールを楽しむ人がいても良い。遠くから傷ついた人を助け逃げる・・・ヒールを楽しむ人がいても良い。このゲームは、きっと何をしても良いゲームなんです」


お姉さんは何故か困惑した様に、


「でも、ゲームの目的は、最初に提示されてるし。ヘルプから何時でも見れるよね?」


流石冒険者ギルドのNPC。

どうしてもストーリーを進めさせたいようだ。

だが、俺はストーリーは放置してやり込む派なんだ。


「違いますよ。ゲームは、それをどう楽しむか・・・それは自由なんです。このゲームをお作りになった女神様は、目的なんて定めていない。便宜上、一応設定しただけだ。だって・・・」


俺は、笑みを浮かべると、


「このゲームはこんなに楽しいんだから。本当に体を動かすみたいに、色々できて・・・世界は本当に綺麗で・・・空気も、食事も・・・水さえも、本当に美味しい。敵と戦うのも楽しいし、ダンジョンを隠れながら疾走するのも楽しい。珍しいアイテムを集めるのも楽しい。世界の秘密に迫るのも楽しいし・・・仲間との交流も楽しい」


生きる目的・・・俺は断言ができる。

このゲームをプレイする事だ、と。

俺はこのゲームを楽しむ為なら・・・何でもする。


「そして、このゲームをプレイする人が、NPCが、従魔が・・・色々な考えで色々な事をして・・・それに関わるのが・・・本当に楽しい。この世界は楽しみに満ちている。これは人類の試練なんかじゃない。これは人類へのプレゼントなんだ」


だから、


「もっとみんな、自分の楽しい事をするべきなんだ。ゲームのロールプレイだけが・・・楽しみ方じゃない」


俺は、みんなを、お姉さんを見て、言う。


「俺が女神様への拝謁条件・・・ダンジョン50個単独クリアをした理由はね・・・女神様に会ったら、御礼を言いたかったんだよ。楽しいゲームを有り難う、って」


・・・出てきてくれないけど。


「・・・そ、そうかい」


お姉さんは、気圧された様に後ずさる。

まあ、ストーリー用NPCにとっては、困った存在だよね。


「まあ、キミが神獣や聖獣を従魔にしているのは見逃してあげるけど・・・限度が有るからね」


後何十体までいけるのか、気になる所だ。


「何十とか・・・もう、とにかく、わきまえなさい」


そう言うと、お姉さんが逃げるように立ち去った。


・・・


で、女神様は?


「なあ月花、女神様っていつ来るんだ?」


「来ないですよ?」


月花にあっさり否定される。

何・・・だと・・・


「ダンジョン50個単独クリアしたら、女神様に拝謁できる、だったよな?」


「ダンジョン100個単独クリア、になりました」


ちょ?!

何で条件遠のいてるの?!


・・・


頑張ろう・・・


「ダンジョン100個クリアしたら、願い事をかなえて下さるそうです・・・何でも、とはいかないそうですが」


とりあえず願い事を100個に増やして貰おうかな。

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