第59話 海辺の教会

「これを見て欲しい。我がギルドが発見した遺物・・・これは月の神殿に至る鍵となる可能性がだね」


もふもふ


ルナナをモフりながら、フィロの話を聞く。

月の神殿って、この前崩壊したフィールドだよな?


フィロは、エルフの美しい女性。

腰までのびた銀髪を揺らしている。


フィロは、賢人ギルドを立ち上げた。

各地の伝承や遺物の収集、整理、そして建物を入手して情報の公開も行っている。

まさに、全ての叡智が集まる場。


レベル上げの効率的なやり方、お金の稼ぎ方、魔物の生息状況、役立つスキル・・・攻略情報の収集と教化も、賢人ギルドの役割だ。


「先は長い。だが、4種の伝承を合わせれば、きっと手が届く・・・」


「5種うさぁ」


フィロが尚も続ける話を、ルナナが否定する。

5種らしいよ。

因幡の兎、月の神殿、アマテラス、ツクヨミ、スサノオ?


「そう、5種という説も考えられたが、1種はかなり怪しい。なので、我々は4種の説を採用している」


5種か4種か知らないけど、どっちにしろ既に崩壊してますよ?


素直に攻略情報収集で良いんじゃね。


「その、月の神殿、って凄いのか?」


フィロに尋ねる。

結局行ってないんだよな。


「勿論だ。月の神殿には・・・この世の理を識る鍵・・・神獣の遺物や伝承が祀られている」


というか、本人がいたよね。


まあ、強いから、っていうよりは、純粋に世界観を楽しんでいるのだろう。

攻略の手伝いもしているし、狩場に困っている訳でも無いから、今は好きなだけ月の神殿を調べていても。


「まあ、シルビアも、何か情報が有れば教えて欲しい」


フィロが微笑んで言う。


「月の神殿は崩壊したうさぁ」


駆け抜ける風が心地良い。

此処は草原フィールド。

石でかまどを作り、コーヒーを沸かしている。

良い香りだ。


フィロが微笑んだまま、固まった。


ややあって、


「えっと・・・その兎喋れたの・・・」


そこ?!

というか、さっきから喋ってたよ?!


「えっと・・・というか、今のは事実・・・いや・・・月花ちゃんならともかく、ただの兎だし・・・」


本人だよ。


「月の神殿は崩壊しましたよ?」


月花がポツリと言う。


「そんな・・・馬鹿な・・・我々の・・・1年に渡る研究が・・・」


俺がギルド解散してから、まだ3ヶ月しか経っていないのだけど。

ギルド設立より前からやっていたのだろうか?


「く・・・まったり研究し隊、のみんなに申し訳無い・・・」


そのギルド名の方が申し訳無いんじゃね?


「誰かが悪い訳でも無いだろう?また次の研究をすれば良いさ」


「・・・そうだね」


フィロが力無く去っていった。


「・・・月花、何か研究対象として適切なのは無いのか?」


「そうですね。海辺の教会、の伝承なら、まだ調べやすいはずです。封印エリアでもないし、推奨レベルも1万前後。更に、海底都市への伝承も隠れています」


「そうだな・・・カゲ」


「はい、此処に」


カゲが横に現れる。

カゲの隠密は相当で、俺でもかなり集中しないと気付かない。


「月花、カゲに情報の提供を。カゲ、イデアのギルドを通じて、こっそりフィロのギルドに情報を流してくれ」


「承りました」


まあ、崩壊した神殿追いかけるよりは、有意義だろう。

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