第57話 作戦通り
ガサ・・・
山道。
日本で良く見慣れた木々。
出てくる魔物は、鹿、猪、熊・・・
リアルで山登りした経験は無いが、テレビで見たのはこんな風景だったと思う。
で。
「此処は何処だ?」
俺、コキュートス行くって言ったよな?
「ご主人よ、新たな従魔を迎えに行くのに、その仏頂面はどうかと思うのじゃが」
フェリオが咎める様に言う。
初耳だよ。
俺は足を止めると、
「行かないぞ?ようやく連携もできてきたし、魔石の消費も早いし、従魔を増やすつもりは無い」
「そうは言うがな、ご主人よ。従魔を増やすのはそなたが明言した事。違えるのは従魔の教育上よろしくないかと」
トライプニルが言う。
「考えても良さそうだと言っただけだし、そもそもお前達手を抜いて騙してたし、教育上とか、お前達明らかに個が確立してるよな」
月花は溜息をつくと、
「ご主人様、あまり駄々をこねられますと、プレイヤーのログアウト条件のレベルを1万まで上げちゃいますよ」
「やれば良いだろ?!」
多分、月花が決めてる訳ではないので、出来ないと思うけど。
「シルビア殿、止めて下さい?!」
カゲが涙目で、頭を振りながらしがみついてきた。
月花の冗談だって。
「・・・で、その従魔っていうのは何処にいるんだ?」
「うむ。頂上にある大穴より洞窟に入り、2日程進んだ先じゃな」
フェリオが言う。
「・・・やっぱり帰る・・・」
遠いよ。
せめてマップ入口で待機しておけよ。
「シルビア殿」
カゲが困った様に言う。
「ん、どうした、カゲ」
「その・・・出口が消えているし、ログアウト出来ないでござる」
・・・
「お前等・・・」
問答無用で封印エリアに誘導するなよ。
「で、このエリアの解放条件は?」
「エリアボスの撃破、だ」
トライプニル。
「それ以外には?」
「此処は小規模マップなので、エリアボスの討伐以外には解放条件が有りません」
月花が告げる。
・・・
「月花、今日も可愛いな。何時も頼りにしてるよ。ところで、このマップの簡単な解放条件教えてくれるか?」
「はい、ご主人様。この鍵をお使い下さい」
「月花?!」
「おい?!」
「うさあ?!」
3者、月花に駆け寄り、鍵を取り上げる。
おい、月花が痛そうじゃないか。
「お前等、動くな!」
トライプニル、フェリオに命じ、動きを止める。
「うさっ、うさっ」
・・・
「おい、このうさぎ、何だ?!」
「うさあ?!」
これってまさか・・・
「カゲがうさぎに・・・?!」
「いえ・・・恐らく、影でこっそり見ていたエリアボスのうさぎが、慌てて出てきたと思われますでござる」
カゲが申し訳なさそうに言う。
・・・
き、気づいてたさ?
「作戦通り、おびき寄せられたようだな、エリアボスのうさぎよ」
「うさあ・・・」
弱そう。
もふ。
もふもふ・・・
「うさっ?!うさ・・・うさあ・・・」
モフると、目を細めて伸びる。
すげー伸びるな。
「で、これを倒せば良いのか?」
「倒すか、屈服させるか、ですね」
明らかに非戦闘ユニットっぽいな。
屈服させるってどうやるんだ?
ころん
お腹を見せて転がるうさぎ。
お腹を撫でてやると、ごろごろ喉を鳴らす。
これ屈服してないか?
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