第53話 みんなを癒したい

雪原。

目の前にはマンモスの死骸。

巨大な肉が、目の前で焼かれている。


雪を固めて作った椅子に、俺とリミアが腰掛けている。


リミアはウェーブのかかった柔らかそうな金髪、柔らかい笑顔を浮かべた少女だ。

種族は天使、本人は純支援職、と言っているが、格闘能力はかなりのものだ。


リミアから、ギルドをどうしようか迷っている、と相談を受けている。


「とりあえず大手に所属してみる、とかはどうなんだ?」


「それも何か違う気がするんです・・・それに・・・」


「それに?」


リミアは困った様な表情で言う。


「大手ギルド・・・エリート意識が凄くて・・・他のプレイヤーや、NPCさんに対し、威張っていて・・・かなり迷惑をかけているんです」


「・・・それはちょっと、参加したくないな」


人間、力を持ってしまうと、どうしてもそうなるのかね。

特に、NPCに対しては倫理観とか働かないんだろうな。


「仕方なく、ソロで狩り場で他のプレイヤーさんの支援をしたりして、お手伝いしているのですが・・・いちいち感謝されても戸惑いますし、偽善者扱いされる事も有りますし・・・」


「みんなの支援をして回るようなギルドが有れば良いんだろうけど・・・」


んー。


焼き上がったマンモスをぱくり。

うん、美味い。

レベルが高い魔物は美味しい、説を提唱したい。


「宜しければどうぞ」


リミアが差し出した岩塩とハーブ。

かけると、旨味が飛躍的に上がった。


「美味いよ」


くすっ。


リミアが笑う。


そうだなあ。


「リミア、ギルド作ったらどうだ?」


「えっ、私がですか?!」


「何にせよ、ギルドマスターの方が方針も決めやすいしな。他のプレイヤー・・・特に僧侶系を育成とかもできるし・・・良いんじゃないか?」


「・・・悪くは無さそうですが・・・私にギルドマスターは務まらないと思います・・・」


「俺でもできたんだ。誰でも最初は未経験だ。やってみると良いよ」


「・・・分かりました。やってみます」


リミアが頷く。


「それと・・・支援かけるとき、こっそりかけたら良いかもしれないな」


「・・・こっそり、ですか?」


「ああ。影からこっそり支援して、逃げる。そうすれば、感謝もされないし、偽善者扱いもされない」


「・・・それは・・・良さそうです」


「噂に聞いたことがある。辻支援、という奴だ。尚、それでも追いかけて御礼を渡そうとする人もいる。辻支援阻止、という奴だ」


辻切り、のヒール版だ。

辻支援阻止・・・人によってはこっそり尾行して、休憩している辻ヒーラーの前に高額アイテムを棄てていく。


「・・・そんな方もいるんですね・・・」


リミアが、決心した様な表情で言う。


「分かりました・・・ますたあの言うとおり・・・『みんなを癒し隊』を結成します」


「うん、もうマスターでは無いし、そんな名前提案してないよね」


「嘘ですね」


「嘘じゃねえよ?!看破スキルで判定したふりするんじゃねえ!」


くすり。


リミアが笑う。


「では、ギルド紹介の挨拶文、ルール決め等、詳しい部分を詰めましょうか」


リミアが微笑んで言う。


「俺が決めるの?!」


まあ、入れ、って言われない限りは、相談くらいには乗るか。

尚、ギルドマスターやる様に言われたからそれは断った。

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