第51話 裏切り
単純な話だ。
主力である敵の幹部は圧倒出来た。
しかし、北方からの破城槌を持った1軍。
進軍を止める事はできず、壁の北側が破壊。
敵軍が街に雪崩込む。
一方、南方から攻める1軍。
魔導砲により壁が破壊。
やはり敵軍が雪崩込む。
街に火が放たれ、防衛勢力は殺され。
塔は占拠され。
敵の総大将を倒して混乱は生じたものの、大将達でそれぞれ軍をまとめ立て直し。
潰走なぞしない。
捕らわれて連れ去られた人もいれば、殺された人もいて。
何にせよ、ウインディレインは陥落した。
俺達は負けたのだ。
純粋な戦力差による、戦略的な敗北。
敗北要因の検討すら不要だ。
主力が囮になって、という訳でも無いだろう。
単純に数がいたから、3方向から攻めただけだ。
単純に、戦力が負けている。
そして人類側は消耗し、魔族側はクリスタルを手中に収めて更に強化。
幹部は倒したが、人材は豊富そうだ。
アジトにギルドメンバーが集まって、無言で座っている。
「・・・思うんだけど」
フィロが口を開く。
「魔族に対抗する為には、個が強くなっても限界があると思う。力が有る者達・・・私達が、他の人を引っ張る必要が有ると思う」
まあ、そうだな。
フェルが続ける。
「ギルドメンバーを増やしましょう。もっと表に出て、強い人をどんどん入れて・・・いえ、どんどん人を入れて、どんどん育てましょう」
え・・・
「私達で手分けすれば、どんな職業でも育てられる。作ろう、最強のギルドを。人類の希望を」
ミストが言う。
種族人間って、俺だけだけどな。
まあ、魔王軍以外って事で。
「僕も賛成だよ。僕の剣技・・・役に立てる時が来た」
アイリス。
剣持ったら何故か俺と同レベルに劣化するんですが。
「女神様の思し召し通り」
リミアが祈る。
女神様なんて本当にいるのだろうか?
「私はご主人様と共に」
関係ない。
・・・
「確かに、俺達だけが強くても、人類は勝てないと思う」
俺の言葉に、みんな頷く。
俺達7人が頑張っても、たくさんの都市のうち、1つの都市、その1箇所だけ、それだけが限界だった。
いや、その気になれば、そこすら横に抜けるのは容易い。
魔王軍に対抗するには、多くの人を育てる必要が有る。
だが。
「でも、俺の器じゃない。俺は、人を導く事はできないし、大ギルドのギルドマスターなんてできない」
「シルビア?!」
俺の言葉に、フェルが驚きの表情を作る。
「誰か他の人がギルドマスターをするなら、俺はギルドマスターを譲る」
見回すが・・・視線を合わせる者はいない。
「そうでなければ・・・このギルドを解散しようと思う」
「マスター・・・貴方なら、私達を・・・人類を導いてくれると・・・確信しています・・・」
リミアが言う。
俺は頭を振ると、
「・・・みんな、俺はね・・・いつか聞かれたよな、俺のリアルの事・・・」
告げる。
「俺は、大それた人間じゃない。俺は・・・親の遺産で食いつないでいる、ただの引き籠もりのガキだ」
常にログインしている、そこから想像出来るだろう・・・それが俺の真実。
「理由も・・・ただまとまったお金があったから、人付き合いが面倒だったから・・・それだけだ」
お涙頂戴の、不幸な話など、ない。
お気楽な人生だ。
・・・親はいなくなったけど。
「俺は人の上に立つ様な器じゃないし・・・人の役に立つ様な立派な人間でも無い・・・ましてや、人類救済なんて、俺の柄じゃない」
素直に、告げる。
それが薄情であり、義務の、責任の、期待の放棄であると知りながら。
「俺は、このゲームをただ楽しみたい。ただ、自分の為にすごしたい・・・俺は・・・人類を助ける気なんて・・・ない」
戸惑い、落胆、幻滅、悲しみ・・・
やってしまったが・・・後戻りはできない。
ただ、俺には・・・
「・・・ごめん」
そう口にするしかなかった。
少し時間が欲しい、みんなにそう言われ・・・
そして次の日・・・ギルド、
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