第50話 圧倒

にしても。


防衛といっても、どれだけの期間防衛すれば良いのか。

ずっと防衛し続ける訳にもいかないし。

隣接拠点潰せば良いのか?

勝利条件を教えて欲しい。


--


ウインディレイン。

風の大クリスタルが安置された風の塔にて、周囲の風を制御している。

砂漠の街ではあるが、池もあれば、それなりに雨も降る。

豊かな街だ。


周囲が砂漠の為、見晴らしは良い。

守りやすい街だ。


「敵影を確認したら、集合がかかる。それを合図に、防衛配置につく。門は1箇所、東のみ。基本的にはそこだと思う」


フィロの解説。

そうだなあ。


「俺なら、内部に潜入、中央の泉に毒を放り込み、病気を蔓延させるかな」


俺の言葉を、フィロが否定する。


「大丈夫。風の大クリスタルは水の大クリスタルと相性が良い。力を分けて貰えるので、水は清浄だよ」


「いや、水の大クリスタル奪われてるじゃん」


「・・・ああ?!」


フィロが呻く。

気づけよ。


「水に毒素が混じれば、マナの流れが乱れるわ。それとなく見ておくわ」


フェルが言う。


「魔族の間者が居ないかは、私が看破で探してみます」


リミアが言う。


「怪しい影があれば報告します」


イデア。


「私も聞き込みしてみるよ」


フェル。


「僕達は・・・まあ、僕達も聞き込みかな」


「うん、よろしくな」


みんな解散・・・俺は、何もできない。

特殊な能力もなければ、人付き合いも苦手だ。


・・・


『普通に、潜んで影から怪しい者が居ないか探せば良いんじゃないのかね?』


フェリオ。

・・・そう言えば。


--


結局、敵は正攻法で来たようだ。


「敵襲、敵襲、敵影有り!」


警報が鳴り響く。


[来たよ。門の前に集合」


フィロが言う。


程なく、ギルドメンバーは全員、門の前に集まった。

他にも、NPCの兵士と傭兵、プレイヤー達・・・

万はいかないが、数千人は超えている。


敵は・・・数千体はいる。


門の前の拠点防衛。

前衛は前列、以降、射程の短い者から順に列を作る。

俺は弓を持って、中衛。

フェルやフィロが後衛。

イデアとアイリスとミストが遊撃。

リミアは医療部隊だ。


先発隊が敵本体に突入。

先発隊は数では劣っていても、精鋭らしい。

状況は悪く無い。


更に敵部隊が追加。

ん、あれ本体じゃないのか?


「北方より、破城槌を持った大型魔獣部隊が侵攻!」


伝令が叫ぶ。


ん、正面突破だけでもないらしい。


「南方より敵の大部隊が侵攻」


南からもか。


あ、増援が来た結果、先発部隊が総崩れ。

こっちに後退してくる。


大規模な遊撃隊が回り込み、挟み撃ち。

やばいのでは。


・・・?!


「散れ!」


叫び、回避運動。


ゴウッ


敵部隊からの魔導砲撃。

密集地を狙われている。


更に敵部隊が追加され。

というか、味方が全然敵を減らせないし、止める事すら出来ていない。


ヒュ


炎の矢が飛び、街の結界に当たって砕ける。


ヒュヒュ


結界が有るから大丈夫・・・か?


混戦となっているが、状況が悪い。


[敵の幹部を見つけた!」


ミストが叫ぶ。


[敵の幹部を叩こう!]


俺も叫ぶ。

とにかくこの状況を打開せねば。


自軍の精鋭が敵の幹部に向かっている。

俺達も混ざる。


ザンッ


味方の首が飛ぶ。

敵も精鋭。

損害は極めて大きい。


フェル、フィロ、リミアを庇いつつ、進む。

イデア、ミスト、アイリスとも合流。


「行かせぬ!」


敵のリザードンが目に見えない速度で斬りかかる。


カッ


アイリスが受け止め、


ボッ


流れるような動作で貫き、蹴り倒す。

進軍速度落ちることも無い。


周囲の味方が減ってきた。

1人、また1人と離脱。


幹部のもとへ辿り着く頃には、俺達だけになっていた。


「ここまで来るとは、誉めてやろう。だが、生きては返さんぞ?」


美しい銀髪、黄金色の鋭い目、整った顔立ち。

魔族って感じだ。

凄まじい力を感じる。


「かかれ!」


敵の幹部の言葉に、敵が殺到。


「スターレイ!」


フェルが放った超広範囲撃滅魔法。

敵の1画が消し飛ぶ。

・・・味方が全滅したからこそ使える手だ。


「ブリッド!」


フェルの魔法。

特に狙いを定めない無数の魔力弾

次々と敵を沈める。


「グレイティストランス!」


アイリスが魔力を込めた槍を投擲。

敵を潰しながら、跳ぶ。


ゴッ


敵が無数の魔法弾を放つ、が、


「鎮まって」


リミアのアンチマジックが、敵の魔法をかき消す。


「凄い、撃てば当たるわ!」


フェルが次々に大魔法を放つ。

その度に被害が拡大。

密集していた陣形は、バラバラと散り始めた。

混乱して衝突し、自滅する敵も多数。


フェリオと月花も、敵の掃除に加わっている。


「き、貴様等!調子に乗るな!」


敵の幹部が怒り、防御に回していた魔力を攻撃に転じ──


「そこっ!」


ようとしたところを、ミストが突く。

鋭い切込み。


「く・・・」


幹部がミストの剣を受け止め──


「やっ」


イデアが幹部を滅多斬りにする。


「貴様あああああ」


魔力を周囲に展開、防御態勢となる。

が、既にミストもイデアも距離をとっている。


「結界をまとったままでも、貴様等を根絶やしにするくらい!」


防御結界と、無差別攻撃魔法の同時行使。

敵の幹部の周囲に力が集まり・・・


「終わりだ!」


俺の3連、UR光武器の宝飾解放ロストトレジャーが発動、幹部を貫いた。

魔法同時行使に気を取られ、俺の接近に気づかず。


「ぐおおおおおおお」


これで・・・勝利。


どよ・・・


魔王軍に動揺が広がる。

狼狽える残党も、可能な限り減らしたい。

かたまっている場所に範囲攻撃が跳ぶ。


そして・・・


『ご主人様、風の塔が奪われました。我々の敗北です。撤退しましょう』


敗北した。

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