第47話 迷子捜索

リュケイオンから脱出後、1週間が過ぎた。

ギルドメンバーは、リアルに忙殺されていたようだが・・・ようやく落ち着いたらしい。


久々の再会だ。


・・・あれ、なんかどんよりしてる?


「・・・どうしたんだ・・・?」


「うう・・・シルビア・・・聞いて・・・妹が・・・!」


フェルが涙目で迫ってくる。


「・・・妹さんがどうした?」


「私の顔を見て、驚くのよ?!既に私の葬式が済んでたわ?!」


まあ、半年も消えてればなー。


「こっちも似たようなものだよ・・・私の地位に既に他の人が座ってて、めでたく失職・・・まあ、蓄えは有るし、こっちですごせば食事も不要だし、自由になったと思う事にするよ」


フィロが言う。

自由の世界にようこそ。


「え、そうなの?私はまた妹に事情話して、元の地位に戻して貰ったわ?」


「・・・へー」


フィロが死んだ魚の様な目で言う。


「私も学校退学になってたー・・・」


ミストががっくりした顔で言う。


「僕も退学だったよ。まあ、家業の手伝いをする事にする」


アイリスが言う。


自営業と、そうでないのの差が。

あと、学生だったのか。

歳が近いのかな。


「私は相変わらず、元の仕事に復帰しました。主君の身辺警護です」


イデアが言う。

ボディーガード?


「そう言えば・・・ゲームの中でも状況が変わっているようだね」


フィロが、そう切り出す。


「何か変わってたのか?」


「うん。300人とか500人規模のギルドもでき、レベルが3000を超える人もちらほらいるみたい。みんな着実に成長しているみたいだよ」


人数は完敗しているけど、そんなレベルで大丈夫か?


「痛ましい事件も起きてますけどね・・・」


リミアが悲しそうに言う。


「痛ましい事件?」


「はい・・・行方不明の放浪の賢者ワンダラーを探して、捜索隊がコキュートスに入り・・・100人の捜索隊の内、実に90名が亡くなったそうです」


「それは・・・大変な被害だな・・・」


「まあ、結局、本人はコキュートスには行ってなかったんだけどね」


フィロが頬を掻きながら言う。


「・・・痛ましい事件だね」


救われないね。


「・・・でもさ、龍水の剣姫ナーガの捜索隊は、50人全員が死亡したって聞いたよ」


フィロが言う。

誰だよ、さっきから物々しい名前なのに迷子になっている奴等。


「本人が何処に行くか告げていれば・・・まだマシだったんだろうね」


アイリスが言う。


「・・・狩り場に移動した後で、何処に行くか知ったんだけど・・・」


ミストが何故か恨めしそうな声で言う。


「まあ、長期ログアウト出来ない場合は、予め、誰かにその情報を伝えておくのが重要だね」


アイリスが言う。


「いや・・・長期ログアウトできないような場所に行くなよ」


俺みたいに、お気楽な身の上なら良いけど。


「それで・・・これが次の狩り場なんだけど」


フィロが取り出したのは・・・表紙に自分自身の尻尾を飲み込もうとする蛇の環が描かれた・・・本。


「まて、これ絶対ログアウト出来なくなるパターンだろ」


何故今の話の流れでこれを出した。


フィロが頭を振り、


「マスター・・・我々がやるべき事は・・・人類の救済。人類の未来を勝ち取る事だよ。このゲームをクリアしなければ、人類に未来は無い」


そうなのか?


「その為には、些細な犠牲は、目を瞑らないといけない・・・そして、我々がやっている事は・・・開拓。我々が新しい土地を開放する事で、強力な武器が出回り、強い狩り場に挑戦する事が出来て・・・人類が先に進めるんだよ」


「いや、解放するエリア、高レベル過ぎるんじゃないか?今、他の人が3000くらいなんだろ?」


実際、精鋭っぽい人達が多数死亡したんじゃ。


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2018/09/14:

アクア→ミスト

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