第46話 邪念と、正義と

ぱっからぱっから


なんか追いつけそうな早さで逃げ出す。


・・・


仕方がない。


ヒュッ


鞭を首に巻き、飛び乗る。


・・・


「熱い?!」


背中超熱いじゃん?!


「大丈夫ですか、ご主人様!」


月花が駆け寄り、回復魔法をかける。


あつつ・・・


火馬が挑発するように足踏みをする。


「熱いぞ?!あんなの乗れるか!」


「ご主人・・・邪念じゃよ。奴は、邪念を持つ者を拒む。そういう者は、自身の邪念に焼かれるのじゃ。無心・・・そして、奴に乗りたいという純粋な気持ち・・・世界を救いたいという気持ち・・・そういった純真な気持ちが重要なのじゃ」


「無心じゃないのか?!」


フェリオの解説に突っ込む。


・・・


「なあ、お前等ひょっとしてグルで、俺をからかってるんじゃ・・・?」


「ご主人、何を言うか?!」


「ご主人様・・・酷い!」


「ヒヒン・・・?!ヒンヒン!」


3者から猛抗議を受ける。


・・・


「やっぱりそうだろ」


ぶんぶんっ


火馬が激しく首を振る。


思えば・・・泉に辿り着く道も、フェリオの先導だったしな。


「取り敢えず・・・来た道を戻るからな」


此処でログアウトしてもいいのだけど。


引き返そうとしたら・・・火馬が一瞬にして回り込む。


「良いのか・・・人間よ?我を乗りこなす事が出来れば、其方は強大な力を得ることが出来るのだぞ・・・?」


喋れるじゃん。

まあ、正直移動手段は欲しい気がするが・・・


「なんかややこしそうだからなあ・・・俺は平和に暮らしたい」


邪念がどうとか、面倒そうだしな。


「我と契約すれば・・・この[LR]火馬の尾を付けよう」


[LR]火馬の尾

・任意の武器の形を取る馬の尾

・炎属性


確かに欲しい武器ではある。


「成る程、フェリオに聞いて準備してくれた訳だな」


「うむ。作るのになかなか骨が折れたぞ」


俺の言葉に、火馬が頷く。


「やっぱりグルじゃねーか」


ぴしり


固まる火馬、フェリオ、月花。


「だいたい、何故こんなややこしい事を?」


火馬は溜息をつくと、話し始めた。


「分かった・・・訳を話そう・・・」


火馬は遠い目をすると、


「あれは創世記の事であった。禁則事項に抵触した為情報の伝達に失敗しました。それでだな。禁則事項に抵触した為情報の伝達に失敗しました。そこで、フェリオから話を聞いて、今回の件を思いついたのだ」


月花が話を引き継ぐ。


「ご主人様、そういう訳なんです。トライプニルを責めないであげてください」


情報の伝達に失敗してるんですけど?!


「・・・困ったのう・・・」


フェリオが言う。


「・・・どうしたんだ?」


聞きたくない気もするが。


「いや、の。実は、こ奴を従魔とする為には、こ奴から真名を知る必要があったのじゃ

。その為のさっきの挑戦だったのじゃが・・・残念ながら、ご主人は達成できておらん。このままでは・・・計画が」


多分、さりげなく月花が漏らしてた、『トライプニル』ってのが真名なんだろうけど、黙っておくことにする。


「そうか。残念だったな。俺は真名が分からないから、こいつを従魔には出来ないな」


ようやく話が見えてきた。

従魔を増やそうとしてたのか。


「その潔い態度、気に入った。良かろう、我の名を名乗ろう」


「聞きたくない」


トライプニル?の名乗りを遮る。


「ご主人様・・・!トライプニルを仲間にすれば、活動範囲も広がるし・・・トライプニル自身も戦えるので、戦闘能力も上がるんですよ?!」


お得な気はするんだが・・・なんだか乗せられた感が有るんだよなあ。


「・・・分かった、トライプニル、お前を従魔にしよう」


「「「???!」」」



「・・・むう・・・見事・・・我が名を言い当てるとは・・・素晴らしい」


いや、月花が普通に漏らしてましたよ。


「流石ご主人様です!」


漏らしてたのキミだよね。


「流石じゃの、ご主人」


流石じゃないよね。


まあ、火の武器におまけがついてきた、らしい。

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