第44話 経験値3倍期間

推奨レベル10万の4階層で、大体戦力が均衡した。

これ以上はレベル上げをしないと進めそうにない。


「じゃあ・・・この辺でレベル上げかな?」


ミストが言う。


「一旦ログアウトして、また来れば良いと思うんだが・・・」


俺が言うが、


「でも実際、前回もそれでしばらく忙殺されたんですよね。今回は前回以上に時間が経っているから、もっと大変だと思うんです」


リミアが言う。

だから早くリアルに戻れば良いのでは。

もしくは仕事なんて辞めてしまおうぜ。


「まあ、時の流れが違いますから」


月花がしみじみと言う。


・・・


「・・・なあ、月花ちゃん・・・時の流れが違う、を少し詳しく」


アイリスが絞り出す様な声で言う。


「・・・?此処の1日は、外の世界の3日ですね」


月花が小首を傾げて言う。


・・・


「月花ちゃん、また冗談よね?」


フェルが尋ねる。


「冗談ではないですよ。失礼なのは服装だけにして下さい」


「服装が失礼って何かな?!」


・・・あれ?


「ねえ、月花ちゃん・・・本当に本当・・・?」


フィロが尋ねる。


「はい。此処で2ヶ月経ったので、リアルでは半年経ってますね」


・・・


「出ようか?」


俺の言葉に、反対する者は居なかった。


ちなみに、経験値やドロップ率も3倍らしい。

完全に損、と言うわけではないようだ。


--


紅い水晶で出来た騎士。

相当高レベルな敵なのだろうが。


駆け抜け様、氷薔薇の鞭でその命を奪う。

次いで、解体。

空中にばら撒かれるドロップを、月花が拾う。


煉獄城の下層に来ていた。

以前は来れなかった階層ではあるが・・・


今は余裕だ。

ソロで。


扉の奥にボスがいたが、それも瞬殺。

色々付き合った結果、俺のレベルがインフレしていて・・・

敵がスロー再生の様にゆっくり動いている。


キャンドルのオバケ。


「レベル2万のアライアンス級。雑魚ですね」


月花が告げる。

いや、そこまでいくと流石に雑魚ではないのだけど。

レンジャーだからな。


しゅっ


鞭で両断する。


「雑魚じゃな」


フェリオが言う。

雑魚じゃない。

あと、お前も働けよ。


「儂が戦うまでもあるまいて。ご主人で十分戦えておるじゃろ」


「いや、従魔としてその発言はおかしい」


普通は主人が戦わず、従魔が戦う。


「月花とて、戦っておらんじゃろ?」


「バフをしてくれているし、ドロップも拾ってくれてるだろ」


戦ってくれたら尚良いけど。


ガシャン


紅い水晶の重騎士が多数・・・面倒だな。


「フェリオ、あいつらを」


「ふむ・・・あいつらを足止めすれば良いのじゃな?」


「いや、倒せよ?!」


何で足止めなんだ。


「そうは言ってもの・・・儂が得意とするのは氷・・・奴等は火の属性を持っておる・・・ちと・・・相性が悪いぞ・・・?」


む、そうなのか。

真フェリオなら余裕で倒せそうだが。


「氷は火に対して有効属性ですね。火と氷は相反属性なので」


月花の解説。

フェリオの発言嘘じゃねーか。

そう言えば、氷薔薇で普通に倒してたな。


「分かった・・・気は進まんが・・・一撃だけ試そう」


いや、倒すまでやれよ。


ギジッ


フェリオが吐き出した雷のブレスが、数体を消し炭と変えた。

・・・ちゃんとドロップは出た。


・・・


・・・いや、雷使ってるじゃん。

氷じゃないじゃん。

氷でいいじゃん。


シャッ


フェリオが爪で攻撃・・・一体倒し、余波で数体巻き込んで倒す。

強いじゃん。

さっきの雷よりたくさん倒したじゃん。


「むぅ・・・力を使い切ったわい。魔石を食べなければこれ以上動けんのぅ」


「・・・魔石は月花と山分けな。普通にやるから、ちゃんと働いてくれ」


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2018/09/14:

アクア→ミスト

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