第37話 身辺警護

コキュートスからの脱出後、しばらくはソロだった。

夜にはログインするのだけど、みんな忙しそう。

学校やら、仕事やら・・・


ダンジョンにソロで潜り、可能な限り敵を避けつつ、宝を回収。

ボスは倒す必要があるので、そこまで高レベルのダンジョンは入れない。

まあ、月花とフェリオはそれなりに強いけど。


「それでさあ、山田くん、色々仕事溜めててさ。私が居なくても出来る事たくさんあったのに」


フィロが愚痴る。

田中くんはどうした?


「ヘヘん。私は妹が普段以上に頑張ってくれた結果、何時もは溜まってる仕事が一切無くなって、職場の細かい問題も色々片付いてて!お姉ちゃんをカバーする為に頑張る妹・・・本当に良い子だよ!」


フェルが言う。

それはひょっとして、普段邪魔する者が居なくなって捗ったのでは?


「教育研修無断欠席で、嫌味言われたよ。人類を救う大義が有るのにね」


アイリスが言う。

止めたら、その教育研修とやら。

大学生?


「もっとみんな、人類救済に真剣になるべきだよねえ」


ミストが言う。

これは遊びでは無い、的な。


「私は・・・患者さんが1人、あの世に旅立ちまして・・・検査入院からの、謎の死・・・どうやら、LJOで死んだようですね」


リミア。

ゲーム内で死ねば、現実でも死ぬ。

そんな噂が有る。

事実なら、今PKやMPKしている人は、現実でも人殺しと言う事になる。


「そう言えば、シルビアのリアルってどうしてるの?」


フェルが尋ねる。


「俺はネットではリアルの情報を明かさない主義だ」


・・・リア充共め。

リアルに目を向けると・・・気が沈む。


「そっか・・・ごめんなさい」


フェルが謝る。

基本的に、ネットではリアルを明かさないのが原則だ。

自分から明かしたのを聞くのも、嫌がる人もいる。

他人に尋ねるのは・・・タブーだ。


まあ、四六時中ログインしてるんだから、想像はついてると思うが。


「私は・・・闇の仕事に従事しています。暗殺から、潜入、工作・・・何でも請け負います。最近の仕事は、ご主人様の身辺警護ですね。向かいのマンションを借りて、怪しい影が無いかチェックしています」


イデアが、唐突にリアルの事を語り始める。

そんな流れと受け取ったのだろうか。

真面目だなあ。


・・・


聞かない方が良い内容が含まれていた気がする。

大丈夫だよな。

俺、リアルの事一切喋ってないしな?


--


「・・・ミスト、凄いわね」


フェルが微妙な顔で称賛を述べる。


ギルドメンバーのマイハウスを、お互いに見学。

みんな個性的で楽しい。


フェルは綺麗に整った家。

心地良い家だった。


イデアの家は、和風の忍者屋敷。

トラップだらけだった。

フェルが引っかかってた。


アイリスは武家屋敷。

道場が広い。


リミアは神社。

厳かな雰囲気だ。


フィロは塔。

本だらけで散らかっていたが、落ち着くらしい。


ミストは・・・

何だか、凄い。


女神像や絵画が、家から飛び出ている。

やたらと大きい。

ソーラーパネルも色々な所から飛び出ている。

ボタンを押すと飛ぶ。

オール電化らしい。

30階建てだ。


・・・


「でね、このボタンを押すと電磁迷彩で」


ミストがボタンを押すと、磁場が光を乱し、視認しづらくなる。


「・・・大きいので、人が来た時に便利だよね」


アイリスが言う。


「ますたあのマイハウスにいつも押し掛ける訳にはいかないですから。やはり、自分のマイハウスをしっかりさせるのは重要だと思います」


リミア。


「また今度泊まらせて。楽しそう」


フィロ。


「そう?今晩あたりどうかな?」


「えっと・・・今晩は、仕事、有るから」


ミストの誘いを、フィロが残念そうに辞退する。


「混沌としていますね。住みたく無いです」


イデアも絶賛する。


「正気を疑いますね」


月花が頷く。


「ちょ、そこ、何でdisったの?!」


ミストがくってかかる。


「ご主人の犬小屋の方が快適じゃろうな」


フェリオが言う。


・・・


「「「「「「喋ったああああああああああ?!」」」」」」


6人の声がハモる。

あれ、声聞くの初か?

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