第34話 英雄グエン

狼の足元。

攻撃しないと敵対判定されない・・・とは言え、生きた心地がしない。


釣って倒す戦法から、遊撃する戦法に変えた途端、殲滅速度が激変。

無双ゲーの様に、どんどん敵を倒し・・・

狼の所まで道が出来てしまった。


仲間は少し離れた所で狩りを続けている。


「それでじゃな、奴は再び相見えん・・・そう言い残してこの地を去ったのじゃ」


何故か俺の所に来て語り始めた狼。


「英雄グエンの氷獄脱出行。グエン英雄譚のヤマですが・・・最も過酷で死を覚悟した、命からがら逃げ出し二度と入る人が居ない様に封印・・・そうライバルっぽい描写は無かった筈ですが・・・」


月花が困ったように言う。


「うん、私が見た封印の書にも、二度と入るなって書いてあった」


横で聞いているフィロが肯定する。

二度と入るなって書いてあった封印解くなよ。


「して、ヌシは、女共に混じって戦わなくても良いのかね?」


「俺は戦えないからな」


「ふむ・・・グエン、と言ったか?奴も女に囲まれておったな。英雄色を好む、か。ヌシは奴に似ておるな」


「・・・グエンのPTは、男3、女3、3組バランス良く、最終的にそれぞれ3組結婚したはず・・・グエンは僧侶のミリリと結婚しましたね」


月花が呻く。

フィロが熱心に聞いてるが、この狼さんの話は真に受けない方が良さそうだ。


俺が此処に居るのは、狼自身が近付いて来たのと、戦闘場所から狼を離しておく為だ。

流れ弾が当たった瞬間、死が確定する。


・・・グエンの奴、戦闘から逃げたらしいが、どうやったんだろう?

プレイヤーじゃなければ逃げられる?


「それでじゃな──」


ぽふ


??!


狼の足元に、雪玉が当たる。


「・・・今のは攻撃行為・・・じゃな?」


ごうううぅぅ・・・


狼の周囲にオーラが立ち込める。


「ち、違うぞ!そう、お捻り的な!それよりもっと話を聞きたいな!本当に面白いよ!」


「おお、そうか!ならば話そう」


オーラが消え、狼が嬉しそうに話を続ける。

危ねえ・・・


「それで南の島に行った時の事じゃがな・・・」


雪狼っぽいんですが、大丈夫なのか?


--


「レベル10000のアライアンス級、クリスタルナイトです。物理反射、魔法反射に気をつけて下さい。攻撃魔法、補助魔法、回復魔法を行使します。高い攻撃力、防御力、素早さを誇ります」


月花の説明。

ステータスが僕の考えた強い魔物、って感じで、雑な印象だ。

攻略法用意しておけよ。


此処は雪原・・・ではない。

何故か城の中へと侵入している。


油断していたら、いつの間にか城の攻略が決定していたのだ。

俺、リーダーだよな?


「ラーヴァフロウ!」


フェルが詠唱した魔法を解き放つ。

地面から溶岩が吹き出し、クリスタルナイトを焼き尽くした。

一撃ですか。


何と言うか。

普通に戦えているので、引き返そうとも言い辛い。


「どうしたの、シルビア。何か言いたそうにこっちを見て。愛の告白なら後にしてね」


フェルがボケてくる。


「違う・・・何でもない、気にするな」


「私なら、何時愛の告白して頂いても良いですよ?」


リミア。

お前、神さんどうなった。

後、タイミングの話じゃない。


「告白しようか?」


ミストが尋ねる。

どんな悪戯したんだ、言ってみ。

そこの冗談言ってる巫女に懺悔してやれ。


「あ、そことそこ罠が有るからな」


注意し、前に出て解除。

一応、みんな罠は警戒してくれていて、俺の注意や解除を待ってくれる。


「此処、隠しだな」


壁に手を滑らすと、壁がへこむ。

反対側の壁が上に上がり、部屋が出る。


罠を解除しつつ、虹色の箱を解錠。

フィロが、壁画を熱心に読んでいる。


「古いですね。英雄グエンも此処には来てないんじゃ無いでしょうか」


月花が感心しながら言う。


「とは言え、宝箱があったくらいだけどな」


俺がため息混じりに言うと、


「いや、この壁画貴重だよ!全て調べれば、あの雪狼の謎にも迫れるかも知れない」


フィロが言う。

フェンリルのお兄さんって事しか知らん。

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