第33話 3年後

さて、今日も外で狩りだ。

かなり安定して狩れるようになっている。


「あれから3年・・・皆さん、かなり成長しましたね」


月花がしみじみと言う。


「まだ3日だよ。3年経ってねえよ」


勝手にカレンダーを進めるんじゃない。


月花がきょとん、として、


「いえ、此処での1年という時間は、外では1日という時間に相当します。つまり、3日しか経っていない様に思えても・・・」


・・・何・・・だと・・・


「つまり、外の世界では3年経ってしまっていると言う事か・・・」


俺の言葉に、月花が重々しく頷く。


「・・・あれ、逆?」


フィロ。


・・・


あっ。


「しかも、時間の流れが違う、がそもそも嘘ですしね」


月花。

何故嘘をついた。


「月花ちゃん???信じたでしょ???」


フェルが涙目で月花をぐらぐら揺する。


「フェアリーへの攻撃行為は禁止されています。すみやかに攻撃行為を停止して下さい」


月花が困った様に言う。

お茶目だなあ、月花。


シルビア 人間 4811 シーカー 33

フェル 魔族 8216 マジックマスター 104

リミア 天使 7987 神巫女 94

ミスト 鬼 8002 剣聖 99

フィロ エルフ 8104 大賢者 101

アイリス 半精霊 8099 アークロード 100

イデア 影人 8133 ニンジャマスター 102


みんな成長したなあ・・・俺以外。


前衛3人、場合によってはリミアも、敵のタゲを取ったり、撹乱したり。

で、フェルとフィロで、着実に敵を撃ち抜く。

安定した戦い方だ。


で、入り口に向かっているんだが・・・


「あの量はいったい・・・」


明らかに出口付近の魔物の密度が濃い。


絶賛、出口付近に向かって移動中の敵もいるし・・・


「何で入り口に集まるんだろうね」


ミストが不思議そうに言う。

そう言えば。


「それは、入って来る者を襲うとか、閉じ込めるとか、そういう事でしょうね」


フェルが言う。


「・・・アラームか」


俺の呟きに、フィロが反応する。


「ますたあ、何か?」


「いや、何で集まってるのかと思ってな・・・敵の動きや、魔力の流れが、アラームの罠に似ている。ひょっとしたら・・・解錠できるかも知れない」


あ。


「・・・あいつか」


俺が指差す方、一際魔物の密度が高い。

そこには、巨大な純白の狼が座っている。


「入り口では無く、あの狼に集まっていると思う」


「じゃあ、あいつを倒せば良いのね」


フェルが詠唱を始める。


「待って下さい。あいつはレジェンド級ボス。戦闘が開始すると逃げられません」


月花が警告。

それはきついな。


「それと、周囲の敵を全て取り巻きにするので、戦闘が始まると全敵が一斉に来ます」


「・・・あの量が来たら耐えられないですね」


リミアが頭を振って言う。


「あの狼は推奨レベル幾つだ?」


「レベル10万のワールドクエスト級です」


・・・?

月花の回答に聞き慣れない単語が。


「ワールドクエスト級?」


「はい。世界中の総力を挙げてようやく討伐出来る強さです」


・・・


「脱出出来ないんじゃ無いのか・・・」


「ねえ、月花ちゃん。別の出口は無いの?」


アイリスが尋ねる。

あったら苦労してないって。


「有りますよ?」


「有るのか・・・」


「ご主人様のマイハウスの中の施設、次元の扉からなら、何時でも脱出可能です」


「流石ますたあ」


フィロがニコニコして言う。

脱出できるなら早く言えよ。


「・・・まあ、退路は確保出来たとして、しばらくレベル上げしてからでも良いかな」


フェルが言う。

俺が言うのはなんだけど、仕事は良いのか?


「じゃあマスタ、さっそくあのでっかい狼を引き付け──」


「お前、話聞いてなかったな!」


ミストの発言を遮る。

全滅するわ。


フェルが呆れた様にミストに言う。


「ミスト、もっと強くなって、それから挑戦、倒して外に出る・・・さっき決めたでしょ?」


「違う、そもそも挑戦しない」


フェルの発言を否定する。


「それより、早く城の探索に」


「行かないよ?!そんな話出てなかったよね!」


フィロのボケにツッコミを入れる。


「ご主人様、近くに氷水晶が近付いていたので仕留めておきました」


「有難う!」


イデアの報告に、お礼を言う。

あいつら、音も無く忍び寄るよね!


「あの狼・・・僕の従魔として相応しくない?」


「相応しくないよ!」


踏み出そうとしたアイリスを止める。

従魔・・・魔物をテイムしたら従魔として飼育できるけど、ボス属性が有るとテイム出来ない。


「ご主人様、今の月花大好き、はどの様な意図で?」


「そんな事言ったっけ?!」


月花の謎の指摘。

何かを聞き違えたのだろうか・・・?


「とにかく、狼殴ってくるよ?」


「駄目だって!」


ミスト、頼むから話を聞いてくれ。


「まあ、冗談はおいておいて・・・狩るんでしょ、狼以外の敵」


「ああ。まあ、もう街に戻ってログアウトしても良いんだが」


「ログアウト出来ないこの身が口惜しいです・・・田中くん、頑張れ」


フィロが祈る様に言う。

頑張れ、田中くん。


「まあ、狼以外の敵、少しずつ倒すぞ。敵は大量だから、一度に大量に相手する事態にはならない様に」


「マスタ、狼以外を倒すのは良いけど・・・別に全滅させても良いんでしょ?」


「良いよ、出来るものならね」


多分沸いて補充されるけど。


「シルビア・・・この戦いが終わったら、聞いてほしいことがあるの」


「うん、フラグ建てるのは止めようか」


フェルのボケを止める。


「行くよ・・・僕達の戦いはこれからだ!」


アイリスが叫び、駆ける。

まあ、外周部はまだ密度が低い。

何とかなるだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る