第32話 中は普通ですよ

「おい、フェル、月花をイジメるな」


自分のフェアリーにやってくれ。


「ねえ、そろそろ家に入ろうよ。まあ、今度家にも案内してあげるよ。凄いんだから」


ミストが言う。


凄まじい大金注ぎ込んだ家と比較するな。


「中は普通に一般的なマイハウスだけどな」


そう言いつつ、開ける。


フォン


浮かび上がったパネルを操作し、扉を解錠。

年季の入った木の扉が空き・・・無個性なセラミックの壁の室内。


「右が居住用、左がその他用途。スペース節約の為、普段は扉と部屋は繋がっていない。月花、ルームキーを」


「はい、ご主人様」


「これがゲストルームのキーだ。これをプレートにかざせば、自分の部屋へと繋がる」


フォン


試しに1枚使うと、何も無い部屋に繋がる。

ベッドにクローゼット、机や鏡、トイレにバス。

一般的な設備だ。


「これを1枚ずつ配る。好きにしてもらって良い」


くるっと、逆方向を見て、


「こっち側がその他用途。キッチン、ダイニング、トレーニングルーム、各種リラクゼーションルーム・・・山とか川とか海とか。温泉もあるから、使うなら男女で時間交代制にしよう」


手をかざし、


「コール、マイルームキー!」


手に、自分の部屋のカードキーが現れる。


「一度所有者設定をすれば、この家の中なら好きに呼び出せる。狩りに行く前に邪魔なら消しておいても良いよ・・・ディスカード、マイルームキー!」


手からカードキーが消える。


「まあ、特にカスタマイズはしていないので、説明も不要だったとは思うが・・・ん?」


何故か全員真顔。

・・・説明が冗長過ぎたか。


「凄い!流石マスター!」


アイリスが興奮気味に向かってきて、飛び跳ねる。

んん??

マイハウス持ってないのかな?


「これは流石に予想できませんでした・・・」


リミア。

どんなのを期待してたんだよ。


「凄い、シルビア、凄いわ!」


フェルが言う。

あれ、フェルもマイハウス持ってたよね?


「・・・お金で建てると、これとは全然違う・・・私もこっちが良かった・・・」


ミストががっくり膝をつく。

お金で建てると違うのか。


「ご主人様、これは一般的なマイハウスとは一線を画していると思います」


イデア。

何でだよ。


「ますたあ。一応言っておくと・・・外と中の広さが違うマイハウスなんて初めて見たし、扉の先が別空間なんてのもあり得ないし、カードキー何て物も無い。そもそも、入り口が番号で解錠だったけど、あんな物も普通は無いよ?」


「え」


フィロの言葉に、声を漏らす。


「・・・月花?」


「はい。頑張りました」


そっかあ、頑張ってたのかあ。


「・・・とにかく、すごしやすい環境なのは有り難いわ。御礼に、私が料理を作りましょうか?」


フェルがそう尋ねてくる。

いや・・・


「あ、私もやるよ?」


ミスト。


「大丈夫ですよ。みなさんはお客様です。ゆっくりしていて下さい。料理は私が作りますので。アピールの機会なんてむざむざ渡す訳が無いのです」


そう、料理等は基本月花に任せている。

みんなは戦闘も頑張ってくれているし、ゆっくり休んでいて欲しい。


「あ・・・じゃあ、温泉・・・入ろうかな」


フェルが言う。


「はい、行ってきて大丈夫ですよ。みなさんが出たらちゃんとお湯は入れ替えますし、ご主人様が入った後もちゃんと新しいお湯にします。中に人が居るかどうかは私が把握できますので、ちゃっかり中でご主人様と鉢合わせ・・・といった『事故』も絶対に起きません」


月花が管理の徹底を伝える。

安心して貰う為だ。

本当にできた妖精だと思う。


「・・・はい・・・」


何故か意気消沈してフェルが温泉へと向かった。


「じゃあ私はトレーニングかな」


ミストがトレーニングルームに入って行く。

何でだよ。


「僕も」


アイリスも入って行く。

お前等休めよ。


「私達も温泉頂いてきますね」


リミアとフィロが温泉に。


「拙者はお傍でお控えします」


イデア。


「いや、イデアもせっかくだから、温泉に入ってきたらどうだ?」


「お気になさらないで下さい。拙者は、後でご主人様と一緒に入らせて頂きますので」


「良いからさっさと入ってこい」


混浴じゃねえよ。


「それではご主人様、モニタールームへと案内しますね」


月花。


「温泉覗けるようなモニターがあるなら破壊しておくように」


余計な事する暇が有るなら食事を作ってきてくれ。


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2018/09/14:

アクア→ミスト

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