第28話 命の保証はしない

「ひーふー・・・凄い・・・取り分300億って、1日の稼ぎが凄いね・・・レベルも凄く上がったし」


アイリスが感嘆の声を上げる。


「マスターのお陰だね」


ミストが嬉しそうに言う。

俺はドロップアップと、経験値アップ、バフ、解錠に解体・・・しかしてない。

・・・お金と経験値に関しては、少し貢献しているか。


「アイリス、かなり頼りになったよ。お陰でPTがかなり安定した。これからも宜しく頼むよ」


「うん、宜しくね」


アイリスが微笑む。


「うう・・・また凄まじいライバルが・・・マスター引き寄せ過ぎ・・・」


フェルが不満気に言う。

いや、フェルのポジション、魔導士は脅かされないだろ。

ミストが愚痴るなら分かるが・・・ミストは前衛が増えたのを純粋に喜んでいる。


それにしても、ギルドに誘う人、誘う人、高レベルだなあ。

戦闘職は軒並みこのランクなのだろうか。


「それでは、また明日、頑張りましょう」


リミアが微笑んで言う。


挨拶を交わし、解散した。


--


つけられている。


この気配は・・・暗殺者。


開けた場所へと方向転換すると共に、月花に防御バフをかけてもらう。


酷く気配を探り難いが・・・恐らく、いる。

姿は視認出来ない。


街に逃げ込む手は有るが、町中で仕掛けて来ない保証はない。

このゲーム、PKのペナルティ無いしな。

実際、PKされたという噂は聞いたことがある。


それにしても解せないのは・・・何故俺に。

戦闘職を狙って欲しい気はするが・・・やはり、非戦闘職の方が容易く殺せるから?


特に執着されている訳でも無いなら、街に行けば・・・


ヒュッ


影が、動いた。


「光の槍よ!」


月花が迎撃で魔法を撃つが、当たったと思った瞬間掻き消える。

しまった。


チャ


喉元に刃が突きつけられる。


・・・詰んだ。


「・・・要求は?」


低く、告げられる。


「我が友人と、なれ」


ひゅー


風が吹き抜ける。


え?


影が、重ねて告げる。


「私めの友人になって下さい」


いや、言い方が丁寧じゃ無いから駄目とかじゃ無いからね?!


「友人・・・別に構わないが・・・」


「ちゃんと構って欲しい」


良いよって意味だからね?!


フッ


影の霊圧が消える。


そして、残されるメッセージ。


「3日、考える時間やろう。断るのであれば、命の保証はしない。良く考えて答えを出す事だな」


・・・


「ご主人様案件な、変わった方ですね」


月花の感想。

その感想はおかしい。


--


ジッ


突きつけられかけた刃を、振り向きざま薔薇剣で受け止める。


キッ キッ


死角から繰り出される剣筋を、剣筋を予測する事で何とか刃を合わせる。


ゴッ


死角からの蹴り。


不意打ちに対応できず、吹き飛び、


チャ


刃を突きつけられる。


・・・


「答えを聞かせて貰おう」


「いや・・・まだ1日しか経っていないんだが・・・?」


3日じゃ無かったのか?


「嫌・・・だと・・・」


血反吐を吐くような声を絞り出す影。

そうじゃない。


「友人の件なら、良いよ」


「く・・・友人は不要だと言うのだな・・・?」


どうしろと。


「良く考えたか?貴様の返答には、命がかかっているのだぞ?」


これ、言葉のすれ違い見えて、ただのPKじゃね?

どうこの状況を脱するか・・・


「貴様が断るなら・・・我は・・・自害する」


「かかってるの、お前の命かよ」


PKじゃ無いのかも知れない。

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