第27話 屋根に二段と、床下と、地下室に

[シルビア?!なんでまた女の子なの!]


フェルの抗議。


[・・・女の子なのかどうか、自分の目で見てくれ・・・]


いや、俺も姿は見てないんだけどね。


[マスターと互角に打ち合える・・・マスターは非戦闘職ですし、戦闘職でそれなら、あまり攻撃は得意では無い感じなのですか?]


フィロが尋ねる。


[どうもその様だな。防御は得意なのかな?]


俺が言うと、


[はい、防御力には自信が有ります]


アイリスが頷く。


[マスター、新しい人が入ったなら、一緒に狩りに行こうよ!]


ミスト。

いや、今日は各自のんびりしようって事になったじゃないか。

まあ、顔合わせするのは悪く無いとは思うが。


[どうしたんだ、ミスト?また明日狩りの予定を建ててるし、それからでも良いのでは]


[また借金が増えたんだよ!]


・・・


[・・・いや、お前、相当稼いでるだろ?]


[何か、ソーラーパネルを設置したらしくて・・・屋根に二段と、床下と、地下室に!]


・・・


[・・・おい、月花。ミストの借金イベントを中断する方法を教えてくれ]


--


取り敢えず、顔合わせを兼ね、みんなで集まる事になった。


ミストの借金イベントは、普通に借金させるおっさんに拒否の意思を伝えれば、停止するらしい。

支払い拒否をする事も出来て、その場合は、最後に増築された部分が元に戻るらしい。

さっさと無駄なソーラーパネルを撤去して貰え。


で、アイリスなんだけど。


フルヘルムを外し、普段の装備に変えたその姿は。


スラリとした薄いオリハルコンのフルプレート。

巨大なカイトシールド。

伸縮自在の細身槍。

純白のマント。

どうやってしまっていたのか、長く青い髪。

美しく、凜々しい顔立ち。


まあ、美女だ。


「改めて、初めまして。アイリスです」


人に信頼を与える、笑顔。


・・・


「えと・・・シルビア・・・?自分の目で見たけど・・・アイリス、普通に女の子よね?」


「・・・ソウデスネ」


辻斬りの真似事するからとか、舐められないように、声を変えていたそうで。

というか、普段の獲物は細身槍ですか。


「同じ前衛だね。一緒に手分けして敵を引きつけようね」


ミストが右手を差し出し、


「うん、宜しくね」


アイリスがミストと握手を交わす。


さて・・・


シルビア 人間 4211 シーカー 23

フェル 魔族 6641 マジックマスター 68

リミア 天使 6014 神巫女 45

ミスト 鬼 6352 剣聖 51

フィロ エルフ 6444 大賢者 61

アイリス 半精霊 6400 アークロード 59


普通に強いよね。

どう見ても、俺だけ異質です。

有り難うございます。


まあ、連携合わせもあるし・・・軽めの狩り場で、ゆっくりやろう。


--


ホーリースフィンクスのフレアブレス。

灼熱の炎が襲いかかるが、アイリスが瞬時に盾を構え、飛び込む。

そのまま炎を押し・・・ホーリースフィンクスを盾で押し込む。


シールドバッシュ!


ホーリースフィンクスが吹き飛び・・・


ギュン


追撃。

槍をくりっと回し、ホーリースフィンクスに無数の刺突。

一撃一撃が軽い様に見え、実際には刺突の瞬間に魔力が爆発しており、大きく傷つけている。


もう一体のホーリースフィンクスが体勢を立て直すが・・・そこにミストが斬り込み、息をつかせぬ連撃。

すっとミストが躱し・・・


ヴァリ


フェルの大魔法がホーリースフィンクスの一体を絶命させた。


チャッ


アイリスが後ろに飛び退き、


ゴウッ


フィロが放った炎が、もう一体のホーリースフィンクスを焼き尽くす。


・・・うん、何で下層来るかなあ?

安定して倒してるけどね。

やっぱりPT人数が増えると全然違う・・・というか、アイリス超強い。


ミストが嬉しそうに言う。


「いやー・・・本当に強いねえ、マスターは」


「何で?!」


俺殆ど何もやってないんですけど?!

パッシブスキル・・・?


「驚きですね・・・この凄まじい強さのアイリスと、互角に戦える戦闘能力持っていたんですね」


フィロが感心して言う。


「ちょ、ちが・・・」


あれは、アイリスが苦手としていた剣を使った結果そうなってただけで、槍と盾を使っているアイリス相手なら1秒かからずに負ける。


月花が溜息をつくと、


「何を言ってるんですか・・・ご主人様は、普段、周囲の状況を確認・・・場合によってはこの前の様に、撤退を選択する必要も有ります。全力で戦える訳がないじゃないですか。なので、PTで戦った場合は、本当の戦闘能力は発揮出来ないんです」


「ちょ?!」


何時も全力ですけど?!


「流石リーダーだね。頼もしい」


アイリスが笑顔で言う。


「いや、俺は非戦闘職だからね?!」


「役割的に、戦闘に専念できない、ですね」


リミアがニコニコして言う。


ああ・・・

冗談だよな?

みんなからかってるだけだよな??


ガッ


忍び寄っていたプロトデストロイヤーを、瞬時に距離を詰めたアイリスが、盾で弾き飛ばす。


・・・あんな動き無理です。

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