第14話 プレイヤースキルとプレイヤースキル

「・・・にしても、シルビアさんと月花ちゃんが倒した敵、ドロップの量が凄いですね。レアドロップもかなりあります」


「それだけがレンジャーの取り柄だからな」


「以前組んだレンジャーさんも、そこまでドロップ多くなったと思うのですが」


「レベルと、3次職ってのが関係していると思う」


「なるほど」


リミアが納得する。


3人で手分けして倒しつつ、進む。

時々ある罠は、俺が注意を喚起し、回避。

リミアの補助魔法は優秀で、身体能力が飛躍的に向上している。

かなり進みやすい。


「トラップや宝箱の解除、上限が95%の筈ですが、かなり高確率で解除出来ているんですね」


リミアが感心した様に言う。


「レンジャー系は100%だぞ」


「あれ?」


それがレンジャー系の強みだからな。


「レンジャー系でも実際には95%ですよ。補正等で100%という表示になりますが、バグです」


月花がぽそりと言う。

何・・・だと・・・


「・・・でも、実際失敗した事ないぞ?」


「ご主人様は、プレイヤースキルで100%にしておられるようですね」


え。


「プレイヤースキル?」


「システムを超えた、プレイヤー自身のスキルですね。あまり強い効果ではないですが、少しだけ補正がつく事が有ります」


リミアが補足してくれる。

そんな物があったのか。


「同じ職業についていても、少しだけ差が出る・・・その為の物ですね。基本的には誤差の範囲ですが、選択する職業によっては大きく化ける能力も有ります」


なるほど。


「リミアも何か有るのか?」


俺がリミアに尋ねると、月花が咎める様に言う。


「ご主人様、駄目です。プレイヤースキルは、他人に話しては駄目です。秘密にすべき物です」


お前今、俺のスキルをばらさなかったか?


リミアが苦笑すると、


「構わないですよ。私のスキルは、看破、です」


あれ?


「看破、って、職業のスキルじゃなかったのか?」


「通常の看破はそうなのですが・・・盗賊系の偽証、は有効になるので・・・」


看破したい相手程、隠蔽される訳か。


「私の場合、相手が悪人か善人か、ある程度分かるのです。お陰で、盗賊系の偽証も無効に出来ます」


「それは便利だな」


レンジャーにも偽証系スキルはあるしな。


「はい。見た瞬間、感じるのです。相手が運命の人かどうか、人生を捧げて良いかどうか」


「大事過ぎないか?!」


重いぞっ。


「・・・神に心を捧げているとか言ってたので油断していましたが・・・急に警戒レベルを上げた方が良い気がしてきました・・・」


月花が訳の分からない事を言う。

フェルを見るような、疑わしい目を向ける。


そう言えば、フェルが異常に強い気がしたけど。

実はあれ、フェルのプレイヤースキルによる物なのかな。


ガサ


機械兵が起き上がる音がする。


シュッ


蒼月から矢を放ち、機械兵を沈黙させる。


「シルビアさんのプレイヤースキルって、解錠率アップだけでしょうか・・・?弓の有効射程距離や、クリティカル発生率がおかしい気がします」


「それはある意味プレイヤースキルだな。練習して、技術でカバーしている。システムアシストをオフにして、な」


「私もシステムアシストはオフにしていますが、初見の敵相手にクリティカルを狙ったり出来ません・・・」


慣れだと思うけどなあ。


そうこうしている間に、神殿の奥に着く。

そこに居たのは・・・巨大なドラゴンゾンビ。


「星竜ファルニール・・・信仰の対象にして・・・欺かれし王。死して尚、この神殿を守る・・・」


リミアが目を閉じ、祈るように言う。

そう言った伝承があるのか。

流石聖職者、詳しい。


「入り口に書いてあったのを読んでいただけですね」


「ああっ、月花ちゃん、ばらしちゃ駄目!」


意外と浅い知識だった。


「王よ、安らかにお眠り下さい」


ボウッ


リミアの周りに、青い炎が無数に浮かび上がる。


「四魂回帰!」


炎が射出、ドラゴンゾンビに纏わり付く。

ドラゴンゾンビの動きが目に見えて鈍る。


「はっ!」


俺も、続けざまに矢を撃ち込む。


「セイクリッドレイストーム!」


月花の魔法が発動、ドラゴンゾンビを次々に撃ち抜く。


ガアッ


ドラゴンゾンビの雄叫びに応え、竜頭の骸骨騎士が無数に生じる。

ゾンビとは思えない速度でこっちに迫る。


くっ・・・


躱しつつ、本体への攻撃も忘れない。


「マルチプルレイ!」


月花が本体への攻撃を諦め、召喚された骸骨兵を撃ち抜いていく。

・・・くそ、やはり火力が足りない。

このままでは押し切られる。


敵の懐に飛び込むと、


「ホーリーマイン・フルバースト!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴッ


20発の聖地雷が、凄まじい音を立てつつ連鎖爆発。

無数の白光柱が立ち、ドラゴンゾンビが天を向き、咆吼・・・倒れる。


ガシャリ


骸骨兵達が崩れる。


「倒せました!」


感極まったのだろう。

リミアが抱きついてくる。


「お疲れ様、リミア、月花」


何とかなった。


「今のは危険でしたよ。ご主人様が切り札を使ったから良いものの・・・リミアさん、もう少し冷静になるべきです。後、早く離れて下さい」


「あ・・・すみません」


リミアがぱっと離れ、恥ずかしそうにする。


「あの・・・最後に使ったもの、何でしょうか?」


「あれは、聖地雷を連続爆破したものだな」


「地雷・・・ですか?」


リミアがきょとん、とする。


「地雷って言えば、設置しても踏んでくれない、ネタ道具ですよね。威力もそんなにない筈ですが」


「レンジャーのスキルでトラップの効果が上昇するのと・・・」


「するのと?」


「足元に直接置く事で、即座に爆発する」


「ずるくないですか?!」


秘技、足元置き。


「更に、同じ座標に幾つも重ねる事でダメージがばぐって、威力が何十、何百倍と跳ね上がる」


「・・・なんか音がおかしかったですよね・・・まだ耳がきーんとしています」


秘技、巻き込み連鎖。


「バグ利用は、処罰対象ですよ・・・とは言え、ご主人様以外にシビアな判定をクリアできる人は居ないので、修正はされないかと」


月花が苦笑する。


ドロップは、かなりの量になった。

ちゃんとドラゴンゾンビの魔石も有る。


「アイテムの分け方だが・・・魔石は、俺が欲しい。聖職者の装備は、リミアの取り分で。後のアイテムは、分けられる分は分け、残りは売って分配だな」


「はい、御願いします」


アイテムの分配後、リミアとフレンド登録をし、別れた。

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