第13話 普通は出来ません

「あああっ、すみません・・・あ、でも、そんな目で見てるんですか?!」


じゃあその格好を辞めてくれ。


「聖職者系の服なら・・・この司祭服でも着たら良いんじゃないか」


ふんわりとした服、格闘の時にも邪魔にはならない。

精神力を高めるので、僧侶系にはかなり良い筈だ。


「あ、有り難うございます・・・」


リミアはあっさり受け取ると、さっさと装備を変えた。

改めて自分が着ていた服を見て、真っ赤になる。

・・・気付いていなかったのが半分、代わりが無かったのが半分、か。


「あの・・・この服は・・・対価として何を支払えば宜しいでしょうか?」


「そのレア度の服なら溢れているので、気にしなくて良いですよ。間違ってもご主人様に体で払おうとか考えないで下さい」


「私は聖職者です!神に仕える身。男性に体や心を許す事は出来ません!」


リミアが真っ赤になって怒る。


「・・・後半はともかく、溢れているのは事実だ。その服はあげるよ」


「・・・この服、URですよ?!」


結構出るんだよね。


「本来の相場なら、2億はする品です。大人しく貰っておくことをお勧めします」


月花が言う。


「2億なら払えますね」


リミアがほっとして言う。

2億、末端価格か。


リミアが差し出した2億を受け取る。

それで借りを感じなくなるなら、貰った方が良いだろう。


「レンジャーって・・・ダンジョン攻略とか、レア探しとか、得意なのでしょうか?」


「ああ。それがレンジャーの強みだな」


弱いけど。


「でしたら、ダンジョン攻略を手伝って頂けないでしょうか?隠しダンジョンを見つけ、聖職者用の装備が眠っていそうなのですが・・・ソロでは厳しく、信頼出来る知り合いもいないので・・・」


「いや、俺とリミアさんも会った直後。俺も信頼出来ないと思うけど」


「嘘ですね」


・・・いや、看破があるなら、信頼出来る人かどうかとか関係ないじゃん。


「・・・分かった、ダンジョン攻略に付き合うよ。俺も、未踏破のダンジョンには興味が有る」


--


ゴゴゴゴゴ・・・


リミアが岩の前で呪文を唱えると、岩が開き・・・


岩の中には、巨大な神殿が建っていた。


外側から見た大きさと、中の広さが合ってないけど。

ダンジョンはそういう物なのだろう。


「罠は・・・少なそうだな」


「そうなのですね」


リミアが、俺の後ろから感心する様に言う。

ん?


「リミアさん、陣形の相談なんだけど・・・リミアさんが前衛、俺が後衛だよね?」


「私が前衛、ですか?」


リミアが不思議そうに小首を傾げる。

あれ?


「リミアさん、モンクだよね?」


「いえ?私は巫女です。支援以外出来ませんよ?」


あれっ。


PT情報を見る。


シルビア 人間 1433 トレジャーハンター 31

リミア 天使 2316 巫女 42


レベル高っ。

純支援職だけど、レベル差で敵を殴り潰してただけか。


・・・いや、このレベルで攻撃役出来ないダンジョンなんて、俺で倒せるのか?


「巫女、複合職ですね。複数の2次職を極めなければなれません。もしくは特殊アイテムを使用するか」


月花の補足。

なるほど。

戦闘職って言うより、そもそもレベル上げが上手いのだろう。


「行きましょう」


リミアが微笑んで言う。


ダンジョンに足を踏み入れると、リミアが無詠唱で続けざまに魔法を行使する。

俺とリミア、月花を様々な光が包む。

同時に、力がみなぎる感じがする。

各種バフだ。

これなら何とかなりそうだ。


神殿は、高い天井、磨かれた床、広い通路・・・

意味有り気な床の模様はフェイク。


ガシャ・・・


3メートル程の高さの機械兵。

6本足に、複数の砲座。

いかにもロボットといった感じだ。


キュイイ


2メートルくらいの高さの人型兵。

4本腕に色々な武器を持っている。


それが複数・・・多い。

トラップは無いが、攻略難易度は高そうだ。

フェルが欲しい。


「・・・援護します!」


リミアが真剣な声音で言う。

むしろ逃げ帰りたいんだけど。


「はっ!」


俺は飛び上がり、高所から矢を撃つ。


ガッ


急所を射抜き、6足の1体を潰す。

身体が軽い、威力も高い。


「雷よ、走れ!」


月花の魔法。

こちらもいつもより威力が高い。

バフのお陰だ。


ギシャアアアアア


複数の機械兵が沈黙。


「はっ!」


リミアが1体を蹴り上げ、もう1体とぶつかり、両方沈黙。


「破!」


リミアが一体に掌底。

吹き飛び、2体巻き込み、沈黙。


「疾!」


リミアが蹴り上げた軌跡が、光の刃となり、次々と切り裂く。

4体の機械兵が沈黙する。


強いじゃないか。

やっぱり戦闘職は強い。


ガンッ


俺の矢も細々と敵を潰し。


大量にいた敵が全て沈黙した。


「強いな」


俺がリミアに言うと、


「いえいえ、シルビアさんこそ。戦闘職と比較しても、遜色ない強さですよ」


リミアがお世辞を言う。


「戦闘職って・・・敵をドロップごと焼き尽くす様な連中と一緒にしないでくれ」


リミアがきょとん、として。


「敵からのドロップは、一定期間は破壊不可オブジェクトです。幾ら戦闘職でも、焼き尽くすなんて出来ませんよ」


「・・・この前組んだ女性魔導士がやってたぞ?」


「・・・それは凄いですね。でも、普通は出来ない筈です」


・・・あれは普通じゃないのか。

まあ、確かに、そうそう簡単に破壊不可オブジェクトが壊れてたら、ゲーム成り立たないよな。

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