第5話 俺達の冒険はこれからだ!
ゲコ・・・
ラージフロッグ。
ぷち強い敵だ。
ダッ
踏み込んだところを、舌が穿つ。
フェイントだ。
既に回避動作をとっている。
そして、
ザッ
魔力を込めた斬撃で、蛙に一撃を加え、
ザッザッ
続けざまに斬りつけ、生命力を削り切った。
正直、一撃でも受けるとやばそうだけど、何とか倒せている。
蛙を解体。
素材や・・・おっと、魔石。
すぐにアイテムがいっぱいになる。
帰ろう。
クエストカウンターで討伐クエストの報告と再受注。
そしてフェアリーちゃんに、
「やあ、また来たよ」
「・・・お帰りなさいませご主人様」
箱の奥の方から声を出すフェアリー。
何故奥の方に居るのか。
「これ預けたいんだけど」
「そこに置いて下さい」
えー。
コトリ
素材を置くと、シュッと消失する。
・・・
「これが魔石で」
「置いて下さい」
・・・
「取りに来て欲しいな」
「嫌です」
・・・
「やっぱり捨ててしまおう」
「えっ?!」
ガシ
驚いてふらっとこっちに近づいたフェアリーの腕を持つ。
「やっぱり、外で素材受け渡し出来ると便利だと思うんだよ。一緒に行こう」
「や・・・無理、無理です」
涙目で首を振るフェアリー。
今までずっと外の世界を知らずにいたんだ。
誰でも最初は怖いよね。
「ほら」
ぐい
手を外に出すと、
「ひっ・・・や・・・」
手に結界を纏わせ、世界に抵抗・・・
ジュッ
手が溶けるまで10秒保った。
手が再生していく。
もう片方の手はマイボックス内で掴んでいる。
ぬかりはない。
「さ、少し休憩したら、再度挑戦だ」
「や・・・無理、無理です・・・もう許して下さい・・・」
「君に広い世界を見せてあげたいんだ」
「嘘ですっ。便利倉庫として使いたいだけですっ」
キッとこちらを睨むと、
「何処でもマイボックスというオプションが有るので、功績を貯めて獲得して下さい。各地のギルドストーンから呼び出せるようになります」
うーむ。
「なるほど」
「言いながら引っ張らないで下さい?!」
ポス
後ろからチョップされる。
「こーら、キミは何やってるの」
呆れた様な声で、お姉さんが注意してきた。
紫色の長い髪、優しそうな目・・・女神様の様な方だ。
「女神様・・・」
「えっ?!」
お姉さんがびっくりする。
しまった、口に出た。
「あ、すみません。お姉さん、何でしょうか?」
「あ、うん・・・キミ、フェアリーを外に出しちゃ駄目だよ。溶けちゃうよ」
うーむ。
「でも、やっぱりこういうところに閉じ籠もって居ると、楽しめないと思うんです。外の世界は広い、それを味合わせてあげたい」
「・・・キミがそれを言うのか・・・」
「え?」
ぎくり、として聞き返す。
「何でもないよ。それより、フェアリーを外に出すのは辞めてあげてくれるかな。確かに、フェアリーは疑似人格、溶けても別のフェアリーがポップするだけ、預けた荷物も消える訳じゃない。でも、今のその子ではなくなるよ」
お姉さんが呆れた様に言う。
「・・・分かりました。すみません」
俺は素直に謝罪した。
--
「ひっ・・・駄目・・・溶けちゃいます・・・」
森にフェアリー──
結界が消える直前、月花をマイボックスに戻す。
ぐて、と倒れ、苦しそうに呻く月花。
「月花、凄いぞ。記録が5分伸びた」
「もう・・・御容赦下さい」
月花が懇願する様に言う。
ガラガラ
月花の前に魔石を積む。
もくもく
月花が魔石を食べていく。
フェアリーは、魔石を与える事で強化され、マイハウスを作ったり色々出来る。
今は、月花の所持魔力、ステータス等を強化して貰っている。
「・・・これ、美味しいです」
「フィールドボスの魔石だな。倒すの苦労したぞ」
「・・・レンジャーなのに、よくはぐれ狼倒せますね」
レンジャーって強いと思うけど。
もそもそと月花が魔石を食べ終わる。
「では、訓練の後半戦いこうか」
「ひっ」
涙目で首を振る月花。
いや、魔石美味しそうに食べてたじゃん。
「ほら、千里の道も一歩から、だぞ」
月花に手を伸ばし・・・
「こーら」
?!
振り向くと、困った様な顔のお姉さん。
何故此処が?!
「キミ・・・ギルドじゃ見つかるからって、わざわざマイボックス呼び出し出来るようにした上で、こんな隠れたスポット探し当てて・・・その努力、別の事に使えないのかなあ?」
「・・・俺には、月花が必要なんです!」
「いや、そう言われても・・・というか、名前付けたんだ」
困った様にお姉さんが言う。
「キミが幾ら入れ込んでも、フェアリーはフェアリー。仮想人格しかないし、決まった受け答えしかしないでしょ?確かにフェアリーは綺麗な見目してるけどね」
「命令を申し付けて下さい」
月花が、抑揚の無い声で言う。
待て、さっき普通に喋ってたよね。
『それは貴方の妄想です』
いや、絶対喋ってた。
と言うか、今直接語りかけて来なかったか。
『フェアリーは喋りません』
・・・
「分かった?キミはもうこんな事止めるんだよ?みんなどんどん強くなってるんだから。キミ、最初は良いペースだったのに・・・」
「・・・分かりました」
--
滝の裏側。
もっくもっく
月花が肩に乗って魔石を食べている。
弱い結界を纏わせるだけで、外で活動出来る様になっていた。
「キミ・・・」
びくり
「お姉さん・・・何故此処に・・・?」
「それはこっちの台詞だよ。まさか此処に来る酔狂な人がいるとは思わなかった。・・・後、気のせいか、そのフェアリー、大分バグってるね?」
魔石にかじりついたまま、滝の様に汗を流す月花。
「もう良い、何も言うまい・・・」
お姉さんが頭を振る。
「ただ、キミは、いや、キミ達は相当出遅れているからね。それだけは言っておくよ・・・まずは、そのネタ職業を考え直すんだね」
レンジャーがネタ職業と言われる理由。
最近になって分かった。
弱い。
攻撃の主力は、攻撃スキルによる蹂躙。
他にも、得意武器に対する、命中補正、威力補正、貫通ダメージ、速度アップ・・・そういった基本スキルも色々有るが・・・
レンジャーには、何も無い。
低レベルの戦闘職が一撃で敵を倒すところ、数撃攻撃する必要が有る。
まあ、誰もやらないよね。
お姉さんが去った後、月花がさめざめと泣き出した。
見られた、見られた、と。
「まあ・・・あれだ。そろそろ月花も動けるようになったし、本格的に狩りをしよう」
「うう・・・」
俺達の冒険はこれからだ!
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