第4話 3ポークスwith餓狼(後編)
―すこしだけ前回のあらすじ― ― ― ―
三兄弟の豚・スリーポークスと音楽勝負をする事になった狼のアレックス。
負けたら不法侵入で交番に自首するという。
果たして勝負の行方は如何に?
― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
「ねぇ審査員のお二方」
気さくに話しかけて来たのは、ロロに興味津々だった三男のミトンだ。
ロロとしてはあまり、気分が良くないみたいだが。
「……なんだよ」
「この勝負、出来レースだよ。最後は必ず、僕達が勝つ」
「審査員は私達なのに?」
疑問に思った私はミトンに問うた。
刹那、ミトンの顔が一気に醜悪になる。
「手前は黙って審査しろや、エセアリス。
……まぁ、人前で歌った事ない
「なんでボクなんだよ」
「デュフフ、僕は君みたいな子がだぁいすきなんだグフフ」
一瞬にしてロロの顔が
まさかあのミトン、そういう趣味があったとは思わなんだ。
それなら私とロロで顔が変わったのも説明がつく。
……やはり、面倒事に巻き込まれていたみたいだ。
私までも気分が悪くなってきた。
「先攻は僕達で良いかな?アレックス」
「構わねぇさ、どっちでも」
「じゃあ僕達が先に歌おう。審査員ちゃん達、よろしく」
ロロに向かってミトンがウィンクをかます。
ロロは全身がぞわっとしたらしく、身震いしていた。
「じゃあ歌うよ、【Distopia】」
――――あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!
突然のデスボイスシャウト。
造詣の有無以前に、耐性がない私は耳をやられた。
ロロは何故か、頭を抑えていた。
いきなりだったから頭痛でもしたのだろう。
――――くぁsあばばばgreぅぇえええ!!
――――どぶnkkkkぐぇぉぁぁぁぁぁあ!
最早何を言っているのかも分からない。
聞き取れない以前に音程がない。
これじゃ音楽とは呼べないじゃないか。
何が出来レースだ。私は耳を押さえながら得点用紙にチェックを付けていく。
どうやらロロも同じみたいで、物凄い剣幕で用紙とにらめっこしていた。
「……どうだった?僕達の音楽は」
「音を楽しむ、それが音楽」
「オラ達なりの魂じゃ」
「私、音楽に造詣ないけどこれだけ言わせて」
「お前は黙ってろエセアリス」
「エセかも知れないけど!私からしたらあんなの音楽じゃない!!
ただ叫んでるだけじゃない!!歌詞も聞き取れないしあれじゃ聴いてくれる人が可哀相だと思わないわけ!?」
「なっ……」
「自分達だけ満足したいなら、その辺の肥溜めでても歌ってきたら?
出来る雰囲気出してきてたからどれほどのものかと思ったけど、がっかりした」
直後、ミトンが私を片手で握り中空に持ち上げた。
「黙って聞いてればこのガキ……!!
僕の歌が何だって?もう一度言ってみろ。
言ったが最後磨り潰してやるからな!!!」
「やめろミトン!
「ツートン、もう無駄だ!今すぐハウンズ呼んでこい!!ミトンを捕らえるように言うんだ!!」
大変な騒ぎになってしまったな。
私はミトンの掌の中で、他人事の様にそう思う。
「ハウンズだ!ミトン、動くな!!」
その声を最後に、私は気絶した。
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