きみとボーグ

ヤンバル

きみとボーグ

 スコップを雪の上で引きずるとジョリジョリうるさい。俺は家出した4号を探して林の中を歩いている。空を見るかぎり今は昼下がり。

 4号は父さんが作った。だから4号は俺の弟。鉄で出来た俺の弟。

 愛すべき俺の弟。


 雪がジョリジョリと鳴るたびにソリ遊びを思い出す。独りっきりのソリ遊び。あの頃は4号なんか居なかったから。

 まあ、4号が出来てからも独りだったけど。


 冬の林は寂しい。きっとここに4号は居る。弟の考えることなんてお兄ちゃんにはお見通しだ。ジョリジョリザクザクと林を歩く。静かな世界で俺だけがやかましい。


 居た。


 4号は木の下に座り込んでいる。背中を木に預けがっくりと項垂れている。死んでるかもしれない。

 歩を進める。雪がやかましい。ジョリジョリ。ジョリジョリ。音に気づいたのか彼は顔を上げた。

 4号は、じっと俺を見つめる。いつか俺がはめ込んだ眼で、俺を見つめる。


「ごめん」


 4号の声は冷めていた。気温のせいだろう。


「家出するなら、もっと楽なところにしろ」


 引きずってきたスコップを二人の間に突き立てた。4号はそれが見えないかのようにうつむく。


「探してくれるとは思わなかったから」


 4号は嬉しく無さそうだ。


「俺って必要かな?」


 4号の上目遣い。父さんが一番好きな仕草だ。


「必要だな」


 4号は笑った。6日ぶりに見た弟の笑顔。


「じゃあなんで捨てたんだよ」


「捨てたのはお前の方だろ」


 俺はスコップを引きぬき振り上げる。4号の顔にスコップから剥がれた雪がかかる。


「殺すの?」


「壊すんだよ」

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きみとボーグ ヤンバル @yanbaru9

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