第2話 転生
場所は日本。
ここはガイサノと呼ばれる大きなショッピングモールの中のひらけた空間。
そこには血まみれになって倒れている黒髪の少年と、その少年に泣きながら声をかけ続けている美しい銀色の髪をした少女がいた。
周りには、拳銃を手に握ったまま静かに眠っている男三人と、血まみれの少年、銀髪の少女とその二人を少し離れたところから見ているショッピングモールに来ていた客や、店員、そして二人のボディーガードに守られた一人の高そうなスーツを着た男がいた。
血まみれの少年の名前は
「そんなに泣くなよ。衣天がそんな顔をしてたら安心できないだろ?」
天空が衣天にそう言って微笑むと、衣天は可愛くて綺麗な顔に血がつくことも気にせず、顔を天空の胸元に埋める。
「天空、死んじゃやだよ」
天空は衣天の言葉を聞くと、うっすらとしか見えない目と耳を頼りに衣天の頭に右手を乗せる。
天空は血まみれの手で衣天の綺麗な髪に触れるのはどうかとは思ったが、いつも頭を撫でると安心したような顔をする衣天に、死ぬ前にどうにか安心してもらうために右手で頭を撫でる。
だが、いつもなら安心したような顔をするのに今回は全然そんな顔をしない。
逆に、さらに泣き出してしまう。
「安心させてやるつもりで撫でたんだけどな。まぁ、俺のことなんてすぐ忘れて早く違う男とつるみなよ」
「こんな時に変な冗談言わないでよ!」
衣天は天空に大きな声で言う。
衣天は普段、自分の感情をあまり表に出さないからか、余計にその言葉の重みが感じられる。
「ごめん。今のは意地悪だった」
天空は自分が言ったことを後悔し、すぐに謝る。
「ううん」
衣天は天空の胸元にさらに強く顔を埋める。
「今まで、ありがとな」
天空は衣天に一番伝えたいことを伝えようと口を開ける。
だが、出て来たのは言葉ではなく大量の血だった。
衣天はすぐに顔をあげ、天空の顔を酷く悲しそうな顔で見つめる。
もうすでに、天空の目は光を失っていた。
(大好きだった、よ)
結局、天空の伝えたかった言葉は、衣天には届かなかった。
__誰でもいいからこの腐った世界を俺の代わりに生きてくれないかなぁ。
酷く辛そうな少年の声が天空の脳内に響く。
直後、天空は自分の体が軽くなったのを感じた。
__次のニュースです。今日午後4時44分ガイサノショッピングモールで拳銃をもつ男三人組が、ショッピングモール内の客四人を射殺しました。
なお、男三人組は三人とも無事警察に連行されました。
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