使役術師の転生者

空式_Ryo

一章 終わりと始まり

第1話 プロローグ

 少年は知っている。

 この世界は理不尽でどうしようもないことを。


 ここはとある王国の貧民街の中にある決して綺麗とは言えない家の中。

 そこには顔の整った黒髪の少年と酒癖の悪そうな男がいた。


「おいクソガキ、ちょっと来い」


 酒癖の悪そうな男が酒で顔を赤くして少年を呼び出す。

 男は明らかに酔っ払っていた。


 少年は震えながら恐る恐る男の元へ歩いて行く。

 男は自分の元まで歩いてきた少年の顔を拳で殴る。

 少年はそのまま後ろへ殴り飛ばされ、地面に尻餅をつく。


「俺様が呼んでいるんだから走って来いよ! 誰のおかげで毎日飯が食っていけてると思ってんだ!」


「ご、ごめん、なざぃ」


 男は地面に座っている少年に跨り少年の顔を殴る。

 少年は男に何度も、何度も謝るが男は一向に止めようとしない。


 男が殴るのをやめた頃には少年の鼻から血が流れ、頬は赤く腫れていた。

 少年の目から涙が流れ落ちる。


(やっぱりな、この世界は理不尽で腐っている。かと言って俺の力で何かが変わるわけでもない。

 ああ、誰でもいいから俺の代わりにこの腐った世界を生きてくれないかなぁ)


 少年はそう思いながら意識が暗い闇の中へと消えて行くのを感じる。


 少年の意識が完全に消える前に悲鳴のような声が聴こえ、パチパチと物が焼ける音と匂いがしたのは多分、少年の気のせいだろう‥‥‥




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