第八夜 「カラボ」とは何であるか?
あみ 「よっすー」
みか 「こんばんはー」
かず 「ばんわー」
†我†「邪魔をする」
あみ 「トートツだけど、カラオケ行かない?」
かず 「マジで唐突だな。まさか今からオールとかか?」
あみ 「い、いや……さすがにオールはないデス。今度、ガッコーの帰りに寄んない?」
みか 「お歌歌うのはキライじゃないでーす」
かず 「嫌じゃないが……気つかうんだよなー、カラオケ」
あみ 「何でだし!」
かず 「あ、ホラ。あたし若干腐ってるからさー。みんなが知ってる曲とか流行りの曲とか分からんのよー」
†我†「腐っている……ゾンビということなのか?」
かず 「い、いや。そこまでではないかと……」
あみ 「別にいくない? あーし、知らない曲でも盛り上がれるしー」
みか 「はい! タンバリン叩きまーす!」
かず 「それでも悩んじゃうのさ。何とか誰でも知ってる奴にしないとなって」
かず 「あー。これならアニメのタイアップ曲だったし分かるかなーとか。そー思うと、なかなか曲選べなくってさー」
みか 「だいじょぶ! あたしも好きなお歌にしますよー?」
かず 「ちな、何ですのん?」
みか 「シューベルトの『アヴェ・マリア』でーす」
あみ 「……んんー?」
かず 「……マジっすか。あんのかしらん?」
しばし、かずが検索。ちゃんとあることが分かって二度ビックリする。
かず 「カラオケ、なめてたわー。ラインナップすげえなー」
みか 「あみちゃん、タンバリンよろしくー!」
あみ 「さすがに『アヴェ・マリア』で叩ける自信ないデス……」
あみ 「カラボ、どこにするん? あーしの行きつけでいーい?」
かず 「曲多いとこがいいっすな。あと、完全禁煙のとこでPLZ」
みか 「わー。カラオケボックスってはじめてー」
かず 「……いつもどこで歌ってるのさ、『アヴェ・マリア』」
†我†「そろそろ教えてもらってもいいだろうか?」
†我†「カラオケ? カラオケボックス? カラボ? いろいろあるのだな」
あみ 「カラオケをやるとこがカラオケボックスでー」
かず 「それを縮めてカラボっすね」
†我†「うむ、成程。それにしても、お前たちは何でも縮めるのが好きであるな」
あみ 「いちいち長いの言ったり書いたりするのめんどいデスからねー」
かず 「ま、これは日本人ならではの文化とも言えますなー」
あみ 「そーなん?」
かず 「英語の場合、単語それぞれの頭文字を取って略すのがフツーだからね」
かず 「FYIとか。これは『For Your Information』で『お知らせしとくと』ね」
あみ 「オシャレくない!?」
かず 「LOLは『Laughing Out Loud』で『(笑)』。これは有名だのう」
かず 「んで、AODはっと……『あみっちのおっぱいはデカい』」
あみ 「最後だけDAIG〇じゃないデスかー! ぎゃおー!」
†我†「待て待て! ともかくカラオケとは何であるか、だ」
あみ 「んと。みんなで伴奏に合わせて歌を歌って踊ったり騒いだりわいわい盛り上がること、デス!」
かず 「ちなみにフリードリンク、飲み放題ですぜ」
†我†「……何でも良いのか? それはお得であるな。うむ」
みか 「ミネラルウォーターはありますかー?」
かず 「んぐ……逆にないかもな、それ」
†我†「それが楽しいのだな? 士気も大いに上がりそうで良いな」
かず 「軍歌とかもあるけど。カラボで士気上げるってパワハラっぽくないっすか?」
あみ 「我もやってみたらお気にになると思いますデス」
†我†「成程……試してみる価値はありそうであるな。うむ」
しばらく間を置いて、再びチャット。
†我†「礼を言うぞ、無垢なる少女たちよ。我はまた現れる。その時はよろしく頼むぞ」
以上、チャット終了。
我と名乗った存在はその後の会話を知ることはなかった。
「ふむ」
代わりに今日知り得た情報を整理することにする。
カラボとは――。
人間たちの間で盛んに行われる娯楽の
完全禁煙という要望もあったので、そのカラボの中で焚火を焚いてはならない。これは決まりだ。何より
肝心のカラオケだ。
これは伴奏に合わせてある者が歌を披露し、それを皆で賞賛するものであるという。しまった。カラボの中には伴奏者たちが入る余地も作らなければならなかったではないか。荘厳な曲であれば、一楽団ほどを準備しなければなるまい。またカラボの大きさを改める必要が出てきた。『箱』と言いながらも、これでは大広間ほどの大きさが必要になってくるやもしれぬ。ううむ、果たしてそれはもはや『箱』と呼べるのだろうか?
途中、タンバリン、という謎の物が登場したが、これは恐らく物ではなく、その行為を表す擬音であろう。我には分かる。タン、と踏み鳴らし、バリン、と割る。人間たちの催す祭典で似たような光景を見たことがあるのでこれに相違ない。素焼きの皿が適しているだろう。高価な物でなくて良い。
ある者が『アヴェ・マリア』を歌うと言っていた。
憎むべき彼の者の母・聖女マリアに祈りを捧げる歌であろう。
であれば、この我を賞賛する歌を作らせるのも悪くない。もちろんカラボもだ。
結論:今後、この居城内に新たなる部屋――カラボを作ることとする。また、密かに我は歌の鍛練をする必要があるだろう。もちろん、この我の偉大さを皆に伝えるためである。予め断っておくが、これは断じて『パワハラ』というものではない。
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