第四夜 「BL」とは何であるか?
あみ 「よっすー」
みか 「こんばんはー」
かず 「ばんわー」
†我†「邪魔をする」
あみ 「っていうか、かずっちひどいしひどいしっ!」
かず 「イキナリ何ですのん」
あみ 「この前、マンガ貸してくれたっしょー?」
かず 「おう。貸したな。三人でTSUTAYA行った時にオモシロソーって言ってた奴な」
みか 「かずちゃんが持ってるから貸してあげるねーって言ってたねー」
あみ 「それだしそれだし! ああああんなだって聞いてないいいい!」
かず 「あんなとは? お前の口から聞かせてもらおうか?( ̄▽ ̄)」
みか 「( ̄▽ ̄)」
あみ 「ううう……」
†我†「うむ。我も興味があるぞ。是非聞かせてもらいたい」
あみ 「我、余計なこと言うなし!」
しばし、わーきゃーとあみのスタ連による葛藤が続く。
あみ 「あ……あれ、その……中身のホーがね?」
かず 「萌えたろう? ドキドキしたろう? それを恥じることはないのだぞ、あみっち」
あみ 「あ、はい。とっても素敵なお話だったデス」
あみ 「じゃなくてっ!」
みか 「じゃなかったー」
あみ 「ああああんな濃厚なBLだって知らなかったしっ!」
かず 「おや? 言っておらんかったかのう、みかさんや」
みか 「言ってなかったかもしれませんねえ、かずさんや」
あみ 「ううう……ヒョーシ見て、とっても素敵な絵だナーって思ってたのに……」
かず 「これを人は表紙詐欺という。良い意味でな!」
†我†「BLとは……何なのだ?」
かず 「うーん。あたしぃー良く分かんないしー。はい、あみっち!」
あみ 「振るなし! つーか、それ、あたしの真似なんですかー! ぎゃおー!」
みか 「ぎゃおー」
あみ 「こほん……BLというのはデスね、男同士の間に生まれる恋愛感情のことなのデス」
†我†「なん……だと……!?」
かず 「死神代行乙」
†我†「その恋愛感情というものには……いわゆる生殖行動は含まれるのか?」
かず 「いやん、えっち。はい、あみっちからお答えをドゾー」
あみ 「振・る・な・し・!」
†我†「い、いや、どうなのだ? それは明かせぬということなのか?」
†我†「生殖行動は含まれるのか含まれないのか、我はそれを知りたい! 重要なのだ!」
たっぷりと間が空いた。
あみ 「……含まれておりました」
†我†「そうか……そうであったか……。実に……興味深い……」
かず 「むう……アレでも随分ソフトな奴だったんじゃがのう」
あみ 「どこがだしどこがだしー! ぎゃおー!」
みか 「ぎゃおー」
かず 「ドSもなければ鬼畜もない。猟奇もヤンデレもない甘々ハッピーエンドだったろう」
†我†「だがしかし、生殖行動は含まれる、と」
かず 「こ、こだわりますのう。いやん、セクハラっすわー」
†我†「す、済まぬ。とても重要だったのだ、そのあるなしが」
†我†「男同士ということだったが……逆もまた真なりと心得て良いのか?」
かず 「ぐいぐい来るのね……そっちはGL。ボーイズラブに対してガールズラブっすね」
みか 「じゃあ、あみっちとかずっちも仲良いからGLってことー?」
あみ 「ん!?」
かず 「んごふっ! ではない……と思いますのよ?」
†我†「つまりそれは……生殖行動が含まれないからか?」
かず 「うーん。こだわるなあ」
あみ 「あーしとかずっちがGLなら、みかっちだってGLっしょ? ナカヨシだしー」
みか 「あ……うん! 何かウレシーです……」
†我†「お前たちは仲が良い。それは我にもしっかりと伝わってくるからな、うむ」
しばらく間を置いて、再びチャット。
†我†「礼を言うぞ、無垢なる少女たちよ。我はまた現れる。その時はよろしく頼むぞ」
以上、チャット終了。
我と名乗った存在はその後の会話を知ることはなかった。
「ふむ」
代わりに今日知り得た情報を整理することにする。
BLとは――。
人間族の雌雄のうち、雄同士の間で執り行われる生殖行動を伴う行為のことである。恋愛感情を前提とした行為と教えられたものの、ときにそれは力による暴力行為を含んだ強制執行であることもあり、言葉による暴力行為を含むこともあるらしい。それでもそこに恋愛感情があるということは、人間という種は被虐的嗜好を深層に秘めている生き物なのかもしれない。愛故に傷つけてしまうし、愛故にその咎めを喜びと共に受け入れる。これには少し驚きを覚えた。常日頃行っている勇者への撃退行動や捕獲後の拷問で、彼らの中に我ら魔族に対して恋愛感情に似た物が芽生えてしまっている可能性が捨てきれない、ということだからだ。
さらに由々しき事実が判明した。
従来、人間族は雌雄揃うことで生殖行動を行うものだと信じられてきたが、雄と雄、雌と雌であっても生殖行動を行うことが可能であるらしい。まだ複数の勇者を一つの檻に収監することは稀だったが、女の奴隷に関しては複数体を一箇所に収監することがあった。確かにその際、子を産んだ例が確認されている。つまりこれは、人間族が性別を問わず生殖行動を行い、種を存続させるために産み、増やすことができる極めて繁殖力の高い生き物であることを示している。どうりでいくら撃退しようともその数が一向に減らない訳だ。
途中出てきた『萌え』という言葉が意味する物が分からずじまいだったが……これについては引き続き調査を続行するものとする。
結論:今後、人間に遭遇した対してはなるべく危害を加えず、牢への収監の際には個々の部屋を与えることとする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます