第11話 狐っくりさん

 変な遊びが流行っていた。 

まずこっくりさんを行うためには、半紙に、「はい」「いいえ」と書き、その間に鳥居を書く、そしてその下に数字・五十音・などを書く。机を囲み、所定の位置に小銭を置く。二人の巫女役は対面し、人差し指を小銭の上に置き、神主役がこっくりさんを呼ぶ儀式をする。「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら、はい へお進みください」話しかけると小銭が二人の指を自動的に「はい」に動かし始める。聞きたい事などを質問をすると、その答えを、小銭が動いて文字の上に滞在し示してくれる。ひとつ質問が終了したら「鳥居の位置までお戻りください」とお願いして、鳥居の位置にもどす。

コックリさんを終了させる、「コックリさん、コックリさん、どうぞおもどりください」とお願いして、コックリさんが「はい」と答えた後、鳥居まで小銭がもどってきたら、「ありがとうございました」と礼を言って終了する。


 その日は紙入れと半襦袢の提出の日の事だった、前の日に裁縫の授業があり、終わらない人は宿題になっていた。きよこの同級生の作った半襦袢が無いと、朝礼は大騒ぎになっていた、先生は家に忘れたのだろうと言い、女の子は朝見せたと言った、教室の両端にある棚に飾りつけを終わらせてからも、女の子は泣きじゃくったままでいた、全授業が終わり襦袢の話になった、「私朝見せてもらったよ」と言っていた同級生がいたり、「私は見てない、忘れたんじゃないの」と言う女の子もいた。無くなったのは大農家のお嬢さんで生地も織が細かい生地を使っていた、皆はガーゼ生地に近いさらし、人によっては端切れだ。

「こっくりさんで探したら見つかるよ」と廊下の窓から上級生が言い出した、教室の皆もやってみようと言い出した。隣の上級生が数人教室にやってきた、半紙と小銭を机に準備し、六年生男子三人が椅子に座り机を囲んだ、こっくりさんを知らない生徒から他学年まで、皆が山なりに取り囲んでいた、好奇心と異様な雰囲気でこっくりさんが始った。呼び出しの儀式をし、質問が始まった、「こっくりさん、こっくりさん、半襦袢は何処にありますか」小銭が止まった文字を一つずつ書き写す、小銭が動く、一文字づつ文章を作っていく。

「し よ こ う ぐ ち」「げ た ば こ」「か べ」こっくりさんを帰す前なのだが山なりの野次馬が崩れ、昇降口へ走る、下駄箱の裏の板壁の中に押し込まれた半襦袢を見つけ上級生は、もう戦争に勝ったかのように教室に駈け込んで来た、後ろからは、板壁から見つけた古雑巾や埃玉にまみれた小袋を持った生徒がなだれ込んできた。皆狐に抓まれた様にだまり込んだ、神主役の六年生、巫女役の三人は何もなかった様にこっくりさんを返す儀式を始めていた。 

気味悪がったり、うそでしょ、と言ったり、騒然としていたが、同級生は半襦袢を教室に展示をしながら、「あした犯人を聞いてみよう」と誰ともなく言い出していた

皆家路についた。半襦袢は板壁の中に押し込まれていて、意図的に押し込んだのは皆にも解っていた、次の日から隠された女の子の一学年上(同じ教室で授業をしていた)農家の女の子が一人学校に来なくなった。先生は何が有ったのか皆に問いただしたが、教室では皆先生に話さなかった、しかしすぐにこっくりさん禁止令が学校から出たのは言うまでもない。

こっくりさんは二度と学校ではやらなくなった。

農家の女の子も二度と学校にはこなかった。

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