第7話 終章~終わったと思ったら・・・


アジアの南の方に位置すると思われる石壁の薄暗い地下室で若い姉と弟二人が何かを調べているようだ。


「デビルズスクエアの52分の間に誰かが植物霊をあやつって何かあったのは間違いないってのに、チクショー!まったく思い出せないわ、ああっ、情けない!」

「お姉ちゃん、汚い言葉遣いに気をつけなよ、お父さんが聞いたらただじゃすまないと思うよ」

「なによ、あんなクソおやじ!アタシらにここを押し付けて世界中をフラフラと遊びまわってるあんな奴!」

 激高タイプの姉と違って、弟は沈着冷静なタイプのようで、そんな姉をしり目に何かを探ろうと意識を集中しているようだったが、

「うん、やはり『魔物』を封じ込めた『植物霊の結界』が残りわずかになってしまってる、何者かの呼びかけに応えて結界を守っていたほとんどの植物霊たちがここを離れてしまったのは間違いなさそうだけど・・・修復はおそらく不可能っぽい感じだから、また新しい結界を張りなおす必要があるみたいだね。」

 弟のただならぬ言葉に姉も肩を落とした。

「アンタが言うなら間違いなさそうね・・・でも、どうすんのよ、結界張るったって、アタシらの力じゃ、せいぜい植物霊の意識を感じ取れても、1000年前の祖先たちみたいに植物霊を動かせるほどの力は持ってないのよ。」

『そのとおりだ!だから探し出さなくてはならない、植物霊を動かす力を持つ者を!』

 姉弟がびっくりして振り返ると、そこにはさっき姉が言ったところの「クソおやじ」が立っていた。

「お・・・お父様、いつお戻りでしたの? 長旅でのお仕事お疲れ様です、お父様・・・」

「この際『クソおやじ』でも何でもかまわん、ここはワシが見張るからお前たち姉弟は直ちに出発して植物霊を動かす力を持つ者を探して連れてこい。一刻も早くだ。」

「あ、そうか、『デビルズスクエア』の時に世界中の植物霊を動かした奴なら――そいつのせいで今アタシらは困ってんだけど――そいつに責任取らせるってわけね!」

「これ、失礼な言い方するでない!われら一族の1000年前のご先祖様に匹敵する大いなる力を持つお方だ、くれぐれも失礼のないようにな。おそらくこの現世に生まれてくる前には霊界でかなり高い位に就かれていた方か、現世で大変な修行をされた高貴な方のはずだ。結界はワシが見張る。ワシとて力不足なのはわかっておるが、結界が完全に崩れるのをいくらか遅らせる程度のこととはできる。だが、この分だとせいぜい1か月くらいが限度か・・・すぐに出発しろ!」

「え~と、でも出発ったって・・・どっち?」

「この世のあらゆる場所の過去と未来を透視する母さんの『千里眼』によると、その方は日本にいるようだが、それ以上はわからん。あとは日本に着いたらお前たち二人で協力して意識を集中して植物霊の波導をたどれば、その方の居場所もつきとめられるはずだ、植物霊の結界による『封印』が解けて『魔物』が復活したら人類はたぶん1日で滅亡、下手したら霊界も消し飛ぶぞ・・・頼んだぞ。」


 それからしばらくして、姉妹はこれも結界が張られて普通の人には見えない出入口を通って地上へと戻った。

「姉さん、では航空券の手配は僕が、姉さんは荷物の準備を・・・」

「アタシに指図しないでって、何回言ったらわかンのよ! でもラッキー!日本よ日本! まずは秋葉原行って、そんでもって寿司、天ぷら、たこ焼き、すき焼き・・・なにから食べようかしらね・・・」

「姉さん! 人類滅亡の危機なんですよ!」

「わかってないわねぇ、滅亡するかもしれないからその前にちょっと楽しむくらいいいじゃない、あ、あとスカイツリーも行かないとね。」


 姉弟の背後にはライトアップされたアンコールワットの塔が輝いていた。


第2作目に つづく

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連載打ち切られた漫画家がアルマゲドンを終わらせる『模範怪盗ナトガイア』 イソベマシロー @mashiro_isobe

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