火の民と盆地の民
第12話新しい任務
勇者が大洞窟の魔物を退治して一月ばかり。
大洞窟を根城にしていた魔物たちは何処かに消え、王国にまた平和な土地が戻ってきた。
天を貫く峻烈な山々を目指す。王都の周辺とは比べもにならないほど風が冷たい。体温がどんどん奪われていく。
王都を出立してもう一週間になる。疲労が溜まり、足も重い。
予定ではもうすぐのはずなんだけど。
重い雲が延々と続く。
固い大地からはところどころに草が生えていた。
そんな風景がここ三日は続いてた。さすがに滅入る。
王国でもかなりの辺境扱いをうけているこの土地にきたのは初めてだった。
最近までは魔王の勢力下におかれていたが、勇者の活躍で魔王の配下が退治され、王国の勢力下に戻ったのだ。僕の任務は、この土地の再調査及び、復興支援だった。
だがその前に、あまりにも気候が違い過ぎる。高地とはきいていたが、これほど寒いとは思わなかった。
どこかで暖房着を調達しようにも、この辺りには村さえない。
寒さに震えながら僕はある場所を目指す。
無理だった。
空から白いものが降ってきたと思ったら、すぐに吹雪に。僕は急いで隠れる場所を探し、どうにか巨木の洞に辿り着いた。
「かんべんしてくれて~」
火をおこすも燃料になるものがない。このままではすぐに消える。
とりあえずカバンから干し肉と塩漬け野菜を取り出し腹に入れる。塩分が体にまわり、疲れが多少は消えてゆく。
吹雪はさらに激しくなり目の前は白一色に染まる。
寒さが忍び寄ってくる。
瞼が重い。
寝たら死ぬとわかっているのに僕は睡魔に抵抗できない。
かんべん
してくれ
こうしてある査察官は静かに山に消えた
「おいおきろ!」
僕は強烈な一撃で起こされる。
さらに頬を殴られる。
「え? ぐえ」
さらに一撃。
「こんなとこで寝たら死ぬぞ」
洞の中に人影がいた。もう焚火は消えており目の前は暗闇になっている。
「あ、僕は このあたりにある 集落に」
朦朧とした意識ではうまく喋れない。
「このあたりの集落て、うちのことか。あんた何者だ?」
「おうちょくぞくささつかんです」
暖かい暖炉で僕は体温を元に戻す。
山菜がたっぷり入ったスープで体の中を温める。
「ほら、これに着替えて。そんな冷えた服じゃダメだ」
わたされたのは獣の毛皮でできた服だった。
「ありがとうございます」
僕はすぐに着替える。
「あんた、なんだっておうちょくぞくなんとかだっけ」
「王直属査察官です」
毛皮の服の保温力はハンパなかった。これで体温が逃げることはない。
「王国の人?」
僕を助けてくれた人は毛皮のフードをしており、目だけが晒されていた。
「はい。こちらの地域が魔王から解放されたので、調査にきました」
「まったく物好きだな。こんな土地に」
「仕事ですから」
あともう一つほど理由がある。
「まあ、吹雪がやんだら教会がある場所につれていってやるよ」
さすがに熱いのかフードを脱ぐ。
「え?」
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