第11話

心が痛い。


今までに受けてきたどんな仕打ちよりも、眼前に広がった理解不能な焼け爛れた混沌よりも、もっともっと切なくて苦しくてこんなにも虚しい。


一体何が起きたのか。


わからなかった。


ただただ目の前が真っ暗になって、呼吸ができなくなった。


蓮華が過去にどこで最後を見届けていたかはわからない。


だが、1つ前のループでは、あの城に至るまでに成長していた。


奇妙な話だ。


蓮華は凪家と言う特殊な家柄の出だが、その家の中でも落ちこぼれに分類され、どちらかと言うと魔術は下手の横好きと言われていた。


そんな彼女が、天才と呼ばれたマルタ・アンジェを下し、邪神の魔力を纏った伊藤正光と戦うまでに至るとは。


ループの中では毎回ほとんどが同じ事象を繰り返した。


私が何をするか決めなくても、時空の流れは決まっているかのごとく、ほとんど同じことをしていたはずだった。


それなのに前回と今回は違う。


蓮華は間違いなく、このループの中で大きな変化を迎えている。


はじめは180万だった魔力量も今では億を超え、潜在的な魔力は測りきれない。


たんに魔力量だけではない。実力そのものが増している。


はじめはアクセルもダブルまでしか使えなかった。


しかし、前回のを見る限り最高質と呼べるクラスのトリプルアクセルを開けていた。


動きや武器の使い方、その他立ち回りなど今までの蓮華からでは考えられない動きをしていた。


一体、彼女の身に何が起きたのか、そしてなぜ彼女はループの内容を自覚できたのか。


クロエにはそれがさっぱりわからなかった。


ただ怖かった。


このループを終わらせることが。


これから先続いていくかわからないこの幸福が。


ただただ怖かった。


たとえ利用されて世界が終わっても、自分さえ正気を保てればループした世界でまた、2人の笑顔が見れる。


それだけで良かったのに。


それだけのために、自分を殺して、時間回帰に邪魔になる恭弥を自らの手で殺害してきた。


彼にはいくら謝っても足りない。


結局は自分の欲望のためだ。


だが、蓮華に疑われてしまった今、クロエは虚無だ。


もう、こんな世界いらない。


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