第2話 みそっかすのバラッド
嗚呼 文字を書くことは 難しいことじゃない
ただ ペンに身をまかせ 頭の中をからっぽにするだけ……
ごめん……限界だよ。
斉藤和義さんの「歌うたいのバラッド」のメロディーに乗せて書き出したのはいいけれど、甘酸っぱいっていうより、ただ酸っぱい感じに、いや、苦い感じになった気がするよ? 頭の悪さが前面に出ただけじゃない? うん、こういうのは金輪際やめとこうか。
1話目の最後に綴ったカレの話だったね。
そうね〜……甘酸っぱい気持ちになれるかは人それぞれだからね。苦情は受けつけません。あ〜、その前にひとつ言わなきゃだ。
僕は少しだけ変わっている。
でもね、みんなと同じ。
時間の流れもみんなと同じ。
少しだけ身体と心が一致してないだけ。
ただ、それだけ。
それは、小学生の時に遡る。
みんなが綺麗な服に身を包んだ入学式。
華やかな景色。風に舞う桜の花びらたち。
僕は母親が作ってくれた、黒のベルベットに赤い小花が咲いたワンピースを着ていた。黒いタイツにエナメルの黒い靴。とてもシックで、とてもチャーミングだと僕は思っていた。
だけどね、周りはピンクや黄色や淡い水色のふわふわでひらひらで、何かの発表会のようで僕は目眩を起こしそうだった。親達の噎せ返る香水の匂いに吐き気を我慢したことも覚えている。
それから数年経ち―――
僕は何かが違うことに気がついた。
「ああ、そうか……みんなと同じで、みんなと違ったんだ……」と。
徐々に周りが恋の話で盛り上がっていく。
誰が好きとか、誰がカッコイイとか。
昨日のテレビの内容に悲鳴をあげる女の子たちはキラキラで眩しかった。
可愛くてキラキラで眩しかった。
ビーズでアクセサリーを作り、大人を真似てマニキュアを塗り、雑誌の中の真似をして光り輝く。眩しかった。とても。
その頃の僕は友達とサッカーをしたり、ジャングルジムで鬼ごっこをしたりするのが楽しかった。汗だらけになって、泥だらけで走り回るのが気持ちよくてたまらなかった。
気がつけば、女の子が僕を責め立てるように囲むようになった。
男子に媚びてるの?
アンタはどうしてスカート履いたりしないの? アタマおかしんじゃないの?
おとこおんな!
気持ち悪いんだよ! おまえ!
死ねば? 目障りなんだよ!
衝撃的な小学生時代と中学生時代は僕を変えていった。
そして、僕は保健室の住人となった。
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