ヒヨコのこと
ハコ少年は大賢者の弟子となりました。
ですがまだまだ分からないことだらけです。
ですのでヒヨコの紹介もしましょうね。
ヒヨコは大賢者の用意した材料でハコが初めて造ったゴーレムです。
ゴーレムは素材と魔法を組み合わせて造る自動人形のこと。
核となる部分に制作者や所有者を登録することで、その人の意のままに操ることが出来る人形です
一般的には核だけ造って土くれに放り込んで動かしたり、壁に埋め込んで要塞にしたり、簡単な魔法なら動く人形として使われたりします。
そんなゴーレムがヒヨコなのです。
ヒヨコの容姿は間違いなくヒヨコです。
ニワトリのヒナであるヒヨコを四角く、ずんぐりむっくり大きくした姿です。
王国で一番背の高い騎士さまより少しだけ高い身長で、王国で一番太ったドワーフの鍛冶師より少しだけ太い身体をしています。
ヒヨコの核もヒヨコです。
正確に言えば、一番最初のヒヨコです。
今のヒヨコも最初のヒヨコと言えなくはないのですが、ヒヨコの核にはヒヨコが入っています。
というのも現在のヒヨコ、最初のヒヨコと比べてだいぶ育っているのです。
生き物ではないので成長ではありませんが、ハコが成長したので大きくなりました。
これはハコが大賢者の弟子として成長している証。
最初に造ったヒヨコはハコの手のひらに乗るほどの大きさしかなく、可動限界時間も一日くらいでした。
しかしハコはヒヨコに毎日継ぎ足しを繰り返して丁寧にメンテナンスをして、今の大きなヒヨコにしていったのです。
というのもハコ、魔法の才能があまり、その…まあそういうことです。
でも素の状態が良かった。何も知らないからこそ知ることが出来るというもの。
カラカラの糸瓜タワシでしたから学習能力はすごく高く、大賢者が眼を見張るほど努力の才能に溢れていました。
そんな状態でずば抜けて高かったのがゴーレム技師としての才能です。
魔法使いの中でも物づくりに長けた人が就く仕事の才能がありましたから、努力を繰り返し、日々研鑽し、楽しく勉強してヒヨコを造ることが出来たのです。
ヒヨコは話すことが出来ません。
基本的に高い知能を持つゴーレムでも話すことはできません。
声に特徴のある魔獣や魔物の素材を使えば話すことが可能になるのではないか、という研究がされていますが今のところ実現していません。
なので身振り手振りや表情で意思を伝えます。ヒヨコの表情はあまり動きませんが。
製作者や所有者ならば魔法で繋がっているのでゴーレムの意志を理解するのは簡単ですが、ハコは見習いですのでジェスチュアのほうが分かりやすいです。
言語や文字を理解することはできるので筆談も可能です。
汚い言葉や醜い文字もわかりますが、それを他の相手に伝える時は柔らかい表現に直したりする判断力もあります。
相手のことを思いやる優しいゴーレムなのです。
素材によって性能が変わるのが特徴ですが、未だ研究段階で実現しているものはあまりなく、研究者や技師のなかでも特に貴重な素材を使ったゴーレムが高値で取引される場合があります。
そういった人々からおそらく値が付けられないであろう素材の数々を容赦なく遠慮なく大賢者に突っ込まれているヒヨコですから、見る人が見たら卒倒してしまうかもしれないですね。
あんなにたくさんの貴重な材料を使って、どうして破綻なく動けているんだって。
ここからさらにドラゴンの素材が突っ込まれるのが楽しみですね。
こうしてヒヨコがつくられました。
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