隠居魔王の成り行き勇者討伐 倒した勇者達が仲間になりたそうにこちらを見ている!

@ieie

第1話かわいい魔王には旅をさせよ。

 カチャカチャカチャカチャ


「ふぅ、ようやく6部攻略したぜ」


 ふふふ、矢張り俺みたいな魔王のかがみはゲーム内でも最強なのさ……

 ん?じいやがいつにも無くててるな。

 モニターのちょっと音量アップにして声聞いてみるか。


「勇者がもう直ぐ来るぞ! 魔王様はまだ帰らぬのか!」


「はっ、サマラ魔王は531日14時間21分55秒、まだハルルの部屋で御隠居されております」


「あのクソニートめ! 誰かあのクソニートを引きずり出す方法は思い付かんのか!」


 ・・・・・・あのじじいしおどきか。

 大体俺はニートでは無く、また別のものだと否定しておこう。


「そうですね…………サマラ魔王のこうひんをハルルの部屋から魔王城まで一定の間隔置くと言うのはどうでしょうか?」


「グッドアイディーア!」


 言い訳無いだろ、何キロあると思ってんだよ……

 大体俺は野生動物じゃ無いんだからそんな事して意味ある訳――。




〜魔王城〜

「お待ちしておりました魔王様」


「うぬ」


 あぁ、失敗した失敗した。まさかiTunesカードが置かれるとは……

あんなの絶対無視出来ないわ……流石、じいや。


われが不在の間、何か変わったことは無いか?」


「はい、それが勇者ルイーナから手紙が来まして」


「貸してみよ」


「はっ!」


拝啓

 行く年を惜しみながら新しい年に希望を馳せるこの頃。魔王サマル様におかれましては、お健やかにお過ごしの事と存じます。

 はぁ、なんか面倒くなったわ、もう時期魔王城制圧しに行くかんねー。

 こっちはこっちで忙しいんよ、畑の場所や川の水の争いとかが絶えないんだべさ。

 ほな、さいなら。


 キャラ定着しろよ……

 最初エリートサラリーマン並の出だしで次ギャル口調、最後は、田舎の方言で締めるって多分、手紙史上初だぞ。


「目を通して頂けたでしょうか?」


「うぬ」


・・・・・・

 あれ? これどうすれば?

 うぁあ、すごくじいやが、「ふふふ、ならこちらから攻めれば良いだけだ! 全軍、出撃の準備を!」って言えよという顔で見てくるんだけど、と言うか頭の上に言葉が出ちゃってるぞ。

 ここは魔王としての威厳を保つ為にも言った方が良いのか、それとも、このまま無言で過ごしてハルルの部屋に戻るか。

 後者だな。


「ま、魔王様! 何処へ!?」


「ハルルの部屋に戻る」


「ま、魔王様ぁ〜!!!」


〜ハルルの部屋〜

 ふぅ、やっぱりここが落ち着くなぁ。

 あ〜、爺やが又、ドタバタしてるよ。音量上げよっと。


「……クソッ、あのクソニートのクソ魔王め、いや、クソその物だな。今度会ったらぶっ飛ばして東京湾に沈めてやろう」


 ・・・・・・絶対首にしてやる。


「あぁ〜、こんな事してる場合じゃ無いのに、いつ勇者が攻めてくるやら」


「一つ質問があるのですが、宜しいでしょうか?」


 おっ、流石に俺をぼうとくした事にいきどおりを覚える奴が居たか?


「なんじゃい」


「サマル様ってお強いんですか? 一応、前魔王ハマル様と、前魔女王サルマ様の一粒種と言う事に成っているのですが、実際に戦っておられる姿は一度も拝見した事が無く……」


「確かに」


「聞き捨てならんぞ今の言葉!」


「ま、魔王様!? 一体何処から」


「そこまで言うなら見せてやろう。吾の力を、ハルルの部屋へ来い!」




〜ハルルの部屋〜

「良いか、じっくり見るが良い。吾の《われ》力を」


 おぉ、魔王様も遂に魔王としての自覚が芽生えておられる。私は温かい目で見守ろう。


「まずは、敵が来たら上ボタンでジャンプして攻撃して来たら右腕左腕に合わせて右ボタン左ボタンを押す。そして一瞬の隙を突いてAB同時押しだ!」


 ちっ、ゲームかよ……


「おぉ、素晴らしいこれなら勇者も瞬殺でしょう!」


「そうだろう。そうだろう。」


 心無しか、魔王様の表情も和らいで来たぞ。ちょっと攻めてみるか。


「では、ついでに勇者でも倒しに行きますか!」


「えぇ? どうしよっかな〜」


 今だ、チャンスは今しか無い。


「いや〜、矢張り魔王様は魔族一、いや、銀河系全てにおいて一番目のお方ですねぇ」


「えぇ? 本当か? じゃぁ、ちょっくら勇者倒しに行っちゃう?」


「行ってらっしゃいませ」




 こうして魔王サマルは勇者ルイーナを成り行きで勇者討伐に出掛けるのであった。

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