022話[オールドカー・チームグランプリ]

「じゃ、始まるから乗ってて」

グランプリが始まるのは10時。今は9時30分となっている。

レースはタイヤの暖めが必要だから一周余計に走らないといけない。

スターティンググリッド入った。

一周目。うねうね走る。端から見ればスネークと呼ばれる。

さて本番だ。集中しなければ。

~「いよいよだ。カルソニックの勝敗は君が決めろ。かっ飛ばせな。よろしく」~

半分褒めて、半分圧力が掛かってる気がした。

グランプリがスタートした。

すべてが本気になる。湾岸と首都高の伝説になる男がのプライドが掛かってる。

レース序盤、俺は順調に飛ばしていた。

右左と続くコーナー。アウトインアウトからヒールアンドトゥ。残りは5周。集中力はOK!だったのに……。

タイヤが唸りを上げた――。

車体はコースアウトしていく。

いままで上位にいたカルソニックは順位を落として行った。

~「カルソニック!コースアウトぉぉぉ!?」~

と言うアナウンスが無線機から聞こえてくる。

「すみません、森谷さん。右タイヤですか?」

俺は聞いた。

~「ん?右だよ。それより、大丈夫か?」~

無線機から帰ってくる声は何気に優しい。

「俺は大丈夫です。でも……」

~「チームの勝ち負けは関係ない。大事なのは生きて帰ってこれるかなんだ。310㎞/hで事故ったら死ぬの確実なのは庵野、お前がよく知っているだろ。GTも一緒で制御が効かなくなったら終わりなんだ。だからせめて生きて帰ってこい」~

言われてみれば、俺は死にかけた。

でも、負けたくない。負けてはいけない。そう感じた。

アクセルを踏み込んだ。土でスピードが出ないものの、コース復帰させた。

フロントの右がバーストしているものの、左キープさせた。

ピットに戻れれば、あとは心配ない。

すごくはなれたものの、ピットに戻れた。

「お前、根性すごいな」

「そうか?」

「そうですよ」

と急に忙しくなった。

「森谷さん、これ……」

と森谷さんが右のタイヤを見た。

「ブレーキが曲がってる……?」

どうやらブレーキキャリパーがひしゃげているらしい。

「パットを外してください。お願いします」

森谷さんは目を見開いた。

「そしたらブレーキ効きませんよ!?」

「いいです。プロですよ?」

とにやりとした。

「わかった。5周頑張ってくれよな」

頑張るしかないんだ――……。


次の日、鈴鹿を出た。

疲れが溜まりきってたのもあり、八九寺が運転して帰った。

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