僕のアイドル
世紀末パンダ
アイドルA
僕が大好きなアイドルは死んだ。
突然だった。
月終わりに行われた握手会の時、ファンの男性に包丁で刺され、大量出血により死んでしまった。僕は体中が震え、乾いた笑いが口から零れた。言葉にならないくらいの衝撃が体に走った。
いじめられて不登校になっていた僕の唯一の救いだった彼女は、黒髪ロングヘアの16歳の少女だった。僕と同い歳だけど、住む世界はまるで違った。キラキラと輝く彼女の笑顔はいつだって僕の心を明るくしてくれた。いつかその笑顔が、僕だけに向けてくれる日がきますように。ずっと願っていた。
なのに
なのに彼女は死んでしまった。
僕のものにはならなかった。いや、死んでしまっても僕のものにはならなかった。こんなに愛しているのに。どうして、どうして僕の事を見てくれないの。ずっとずっと愛してるのに。
「あの子の遺体はどうなるんですか。僕のものにはなりませんか」
「なる訳ないでしょ。君のものにはならないよ」
狭く冷たい部屋。目の前に座る男が呆れた声で僕に返答する。
僕は虚ろな目で、再び声を絞り言った。
「僕の手で殺したんだ。僕のものにならないなんて、おかしいじゃないか」
僕のアイドル 世紀末パンダ @panda0411
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