第39話

 昔から、風邪をあまり引かない子供だった。だからこそ、高熱が出るとすごく辛く感じる。


 僕は人生で3 度目の風邪を引いた。

 体温は39度近くまで上昇し、今まで経験したことのない状況に体が悲鳴をあげている。


 たまに呼吸すらままならない状態だ。

 朦朧とする意識の中、死にたくないという気持ちだけが意識をつなぎとめていた。


 だが実際には、体に力が入らず頭もぼんやりとしてきている。思考がまとまらず、寒気がひどい。


 それでも、僕にはやらなければいけないことがある。彼女が待っている。心配させるわけにはいかないんだ。それに僕は彼女より先に死ぬわけにはいかない。彼女を一人にするわけにはいけないんだ。


 彼女の病室にもう何日行けてないのだろうか。

 何よりこんなことをしている内にもし恵と2度と会えなくなってしまったらと思うと怖くてたまらなかった。


 恵に残された時間はきっとわずかだ。

 まだ、僕になにかしてあげられることはないだろうか……


 ダメだ、やっぱり思考がまとまらないや……


 今の僕にできることはなんだ……手紙……そうだ手紙を書こう。


 あの契約を破棄すると明記した上で僕の本当の気持ちを伝えるんだ。


 風邪が治ったらお見舞いをサボったお詫びとして渡せば、少しは機嫌も良くなるだろう。



 恵の喜ぶ顔を思い浮かべると、重たい体もなんとか動いてくれた。


 僕は筆を執り、想いの全てを残さず綴った。


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