第25話
目が覚めると自分の病室のベッドにいた。
窓の外は暗い。ゆっくりと体を起こして、窓からの景色を眺めた。周りの建物にも明かりが灯っていないことから深夜であることが予想できた。
たしか、私は発作が来て意識を失ったはずだ。問題はどのくらい時間が経っているのかということだ。
記憶を辿るとすぐに彼のつまらなそうな顔が浮かんだ。
ズキンズキンと胸が痛む。
そうだ、たしかあの時……
途端に涙が出そうになる。
どこで失敗しちゃったのかな……
そう思ったとき、堪えきれずに零れた涙が私の手の甲で弾けた。
意識がなくなる寸前にも同じことを考えていたような気がする。
そして私はかつてない程に強く思ったのだ。
【死にたくない】と。
涙。それは悲しいときに流れるもの。そして、生きていることの証。
私はまだ生きている。
だけど、こんなことは初めてだった。
焦燥が不安を大きくする。
こんなときこそ彼に会いたいのに……
なんで、思うようにいかないのだろう。
ただ生きるだけでも大変なのに、それ以上を望んだからなのかな。
相変わらず神様は私に厳しいね。
だけどね、神様。もう私は彼が好きなんだ。
彼に会う度にわずかな寿命が削られていくとしても、私は彼に会いに行く。
彼と触れる度に痺れが、痛みが増していくとしても、私は彼に触れていたい。
白雪姫の逆でもいい。
それが死と引き換えとしても、唇を重ねてみたい。
それが今の私なの。
邪魔したって無駄だよ。
血が、滾っている。
私は今日、生まれ変わったのだ。
もう何も恐れない。
最後の瞬間まで、私は恋に生きよう。
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