第23話

 焦燥が体を包む。


 先程から彼の反応が急に素っ気なくなった。


 何か私はまちがってしまったようだ。


 わからない。何がダメだったのか、私にはわからなかった。



 降り始めた雨がアスファルトを滲ませるように、ゆっくりと、ただ焦りだけが私のなかに広がっていった。



 急に彼との距離を感じた。


 距離と言うよりも、私との間に壁を作られたような、そんな感じだ。



 何を言っても、何を聞いても、彼の返事は素っ気なく、会話を重ねる度に私の求めたものとかけ離れていくのが辛くて、私は口を閉ざした。

 


 沈黙にも種類があるようだ。これは間違いなくダメなやつだ。



「ねえ? 今日はもう終わりにしよっか?」

 私は耐えきれず撤退を選択した。

「うん、そうだね」

 彼の目からは光が消えていた。

「……そ、それじゃまたね!」

 次の約束をしようとしたけど、なんだか断られるような気がして、私は逃げるようにその場を離れた。



 なんでよ……どうしたら良かったのよ……


 もっと彼に近づきたいのに、踏み込むことが怖くなった。


 涙で滲む視界が、ぼやけて、ぐるぐるとまわり始める。


 呼吸はいつの間にかままならなくなっている。


 苦しい。


 発作だ……

 こんなときになんで!?


 助けて……


 まだ……死にたくない……




 そこで、私の意識は剥がれ落ちた。

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