第107話夢の国

 皆さんは、ディズニーランドを一人で回ったことはあるだろうか。


 僕は、ある。

 高校の修学旅行でのことだ。


 園内を好きなもの同士で自由行動することになっていたので、友達のいない僕は当然一人で回った。

 楽しそうな人たちの中で一人きりだと、余計に孤独を感じるものだと知った。


 自由行動は何時間もあったので、僕はやることがなくてすっかり困っていた。

 ぼんやりと園内を歩いたり、土産屋を見て回ったりして時間を潰した。


 同じ学校の制服を着ている人を見つけると物陰に隠れた。

「うわぁ、あいつ一人で回ってるじゃん。気持ちわるっ!」と思われるのが嫌だったのだ。

 まあ、実際は誰も僕のことなんて気にしていないのだろうが……。


 とにかく、僕は何時間も一人でとぼとぼ歩いていた。

 そして、ふと思った。

 一人でアトラクションに乗る勇気はないけれど、何か一つくらいは思い出が欲しいものだ、と。


 そんなわけで僕は、二百円でできる射撃のようなゲームで遊んだ。

 それがディズニーランドに関する、唯一の良い思い出である。


 係員のお姉さんはぼっちの僕にも優しかった。

 さすがはプロだなあと思った。


 夕方になると僕はディズニーランドを出て、電車に乗って隣の駅まで向かった。

 宿泊しているホテルまで各自で帰らなければならないことになっていたのだ。


 一人で電車に揺られている孤独感はすさまじかった。


 ホテルに着くと、ロビーで教師がチェックシートを持って立っていた。

 生徒が無事に全員帰ってきたかを確認していたのだ。


 その教師の「うわぁ、こいつ一人で帰ってきたのかよ……」と言いたげな目が辛かった(被害妄想かもしれないが)。

 散々な修学旅行だった。

 本当に、ぼっちには辛いイベントである。


 楽しそうな人たちの中で、一人孤独でいることは本当にキツイ。

 それが修学旅行の数日感で学んだことだった。


 友達がいる人には味わえない心理状態を体験できた。


 この体験が今になって、創作に生きるかもしれない……!

 そんな風に、無理やりにでも前向きに捉えなければやっていられない記憶である。


 ディズニーランドを一人で見て回る男子高校生の話を書くときがくれば、この体験も生きるのだろうが……。

 まあ、誰もそんな話は読みたくないだろう。

 ははは……。


 虚しくなったところで、今日はここまで。

 では、また。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る