第100話百回に渡る逃避

 数日前、五月だというのにとんでもなく暑い日があった。


 僕はその日、

「ああ、こんなに暑くては小説を書くやる気が起きないなあ」

 などと思い、エッセイを書いてお茶を濁した。


 それから数日が経ち、例年並みの気候に戻った。

 そして気付く。

「別に涼しくてもやる気は出ないのだ」と。 


 ……うん、やる気が出るのを待っていたらいつまでも小説は書けない。


 短いエッセイ(と呼んでいいのかわからないもの)を書き続け、今回で100篇目である。

 これは僕が小説を書くことから100回逃避したということに他ならない。

「小説が書けないなあ、代わりにエッセイでも書くか……」という行動が100回続いたわけである。

 まったく、どうしようもない。


 本当に書きたいものは小説なんだ。

 暑かろうが寒かろうが湿度が高かろうが、とにかく書かなければ完成しない。

 やる気が出るのを待ってちゃいけないのだ。


 一文字ずつ、一文ずつでも書かねばならない。

 100回に渡る逃避を続けた僕は真剣にそう思った。

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